顧客分析で優良化プロセスを見極めよ!目指すは販促策の最適化

「マーケティングは大切と言うけど、何から手をつければいいんだろう?」そんな疑問にダイレクトマーケティングのプロがお応え。世の中の販促マーケティングの実例から重要なポイントを分析し、明日から使える実践的ノウハウとしてわかりやすくご紹介します!
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1to1マーケティングに「顧客ポートフォリオ」という考え方があります。ポートフォリオはもともと投資用語で「資産の組合せ」という意味です。つまり、顧客を資産とみなし、株や債権の運用と同じように各顧客セグメントの特性に応じた投資(販促)をすべき、という発想です。そのためには顧客分析によって適切なセグメンテーションを行い、セグメント単位で販促策を最適化する必要があります。
今回はその実践方法について事例を交えながら紹介します。
1. 顧客分析の起点〜自社顧客の多様性を把握しよう
「顧客の多様性を尊重し、決して一律に扱ってはいけない」というのが1to1マーケティングを始めとする近年の顧客中心マーケティングの発想です。そこで、顧客分析の起点となるのは、自社顧客の多様性の把握になりますが、ここでいう多様性とは大きく2つの要素があります。
① 収益性(LTVが基本、簡易的にはRFM)の違い
② 自社商品の購入やサービス利用の際のニーズの違い
この2つを組合せた顧客の優良化プロセスはぞれぞれ違います。例えるなら、高尾山には山頂までの登山道が1号路から6号路まであります。ゴールは全部おなじ「山頂」なのですが、ふもとからの道筋が全て違うのです。山頂を「優良顧客」、ふもとを「新規顧客」、登山道が「優良化プロセス」とすると、新規顧客が優良化するプロセスの違いと登山道の違いはよく似ています。
自社顧客の登山道はいったいどのようなバリエーションがあるのか、それをまず顧客分析の起点にしましょう。
この顧客の多様性をまず把握することで切り開かれる可能性に関して、以下の外資系ラグジュアリーブランドの事例を紹介します。
顧客の継続購入を大きく促進
https://drm.ricoh.jp/casestudy/all/c00003.html
ラグジュアリーブランドのように、店頭における購入体験を顧客側も重視する場合、顧客の属性情報、ブランドへのニーズなどが接客によって引き出しやすいはずです。この宝の山とも言える店頭で収集した顧客データと、併設するEコマースからの顧客データを集約、分析し、その結果を基にコミュニケーション戦略を立案すれば、より高い効果が見込めます。
この事例では、全国の店舗からタイムリーに情報を収集し、タイムリーな施策を実施することがポイントであり、店舗と連携する専門窓口(事務局)を設置することでPDCAサイクルを組織全体ですばやく回せるようにしています。
また、分析結果を基に訴求情報を顧客毎に分類し、コミュニケーションを展開することで、顧客の購買行動を後押しする事に成功。購入頻度や客単価の大幅アップにつながっています。
2. 優良化のプロセスに着目した顧客セグメンテーションで販促を最適化する
このように、顧客セグメントを分ける大きな利点は、セグメントごとのマーケティング施策の反応を常に観察することで、より適切な1to1マーケティングに近づくことです。1to1マーケティングでは、このプロセスを「顧客との学習関係の構築」という言い方をしています。
しかし、自社顧客が優良化するプロセスを明確に把握していない企業は意外に多くあります。RFM分析や購入商品ジャンル、メディアやチャネルの使い分けの好みなどの各種情報をもとに、優良化のパターンを浮き彫りにしましょう。
そうすることで、個々の顧客の成長をどのように促していくのか有効な施策の組合せがテストできます。
こういった既存顧客の行動分析を販促策に結びつけていくアプローチとして、自動車業界の事例を紹介しましょう。
パーソナライズ化されたメッセージ配信
https://drm.ricoh.jp/casestudy/all/c00002.html
自動車は車種が違えばターゲット顧客も違います。また来店から成約に至るプロセスも違います。そこで、まずそれぞれの車種を購入した顧客の特性を分析します。その上で新規顧客が来店した際、どの車種の顧客特性と近いか判別し、それぞれの顧客へのコミュニケーションを最適化する、というものです。
上記の登山道の例えで言えば、ふもとに案内人が立っていて、それぞれの登山客のニーズに合わせてお勧めの登山道に誘導してくれるようなものです。
これはベテランの営業パーソンが自然に行っているプロセスをシステムで標準化したものとも言え、「営業ノウハウやスキルの共有」という観点でも意義のある取組みだと思います。
3. 顧客セグメンテーションの実際
ここでは、以上の流れを業種を問わない形で、少し精密に分解して説明したいと思います。
下図は筆者が某ダイレクトマーケティング企業に在職中、顧客データ分析のコンサルタントとディスカッションした際に提示した図です。
これはあくまで一例ですが、まず顧客リスト全体で上位20%くらいにいる優良顧客層を抽出します。上図ではLTVですが、RFMスコアや単純にM値(累積購買金額)の高い顧客層で代用してもまずは良いと思います。
次にこの優良顧客を「初回購入金額」、「初回獲得媒体」「初回購入商品」などから始まり、「チャネル併用実績」、「購入商品ジャンル」、「一定のF値やM値に到達するまでのスピード」「返品、交換実績」、「問い合わせ実績」などから、優良化パターンや嗜好性、ニーズなどに共通点のあるグループ同士に分けます。
こうして分けたグループそれぞれで可能ならアンケート、グループインタビュー、デプスインタビューをして顧客像の確認、補強を行います。この時注意しなければならないのは、この顧客像を一定のデモグラフィック属性のみに安易に押し込まないことです。その属性にあてはまらない顧客が多くいる可能性があります。あくまで収益性と購買特性を中心に顧客像を表現しましょう。
最後に残り80%の中位〜下位顧客を「どのタイプの優良顧客グループになるポテンシャルを持っているか」で紐づけます。
この一連のプロセスは主にクラスタリング(クラスター分析)という手法を使い、データマイニングツールで実行しますが、外注してしまうのも一考です。
こうして特性のはっきりした顧客セグメンテーション毎に、コミュニケーション施策を展開することで、仮説検証のサイクルも早くなり、より費用対効果の高いダイレクトマーケティングが実施できる、というわけです。
また、この取組みは顧客にとっても「自分のことを理解してくれている」という親近感、満足感に繋がり、LTVを向上させます。
▶︎関連リンク
まとめ
ある統計の専門家が大手企業の経営者にデータ活用の相談を受けた際に、「顧客を分析して、そのデータを何に使いたいのですか?」と聞いたら答えが返ってこなかった、という記事を読んだことがあります。ここまでお読み頂いた読者なら即座にこう答えられるはずです。「自社顧客の多様性を把握し、顧客セグメント特性に基づいたマーケティング施策を実施するためです。」
ぜひ皆さんも、顧客分析にもとづくセグメンテーションと販促策の組合せを実践して下さい。そのプロセスにおける顧客との学習関係の構築は自社のマーケティング力を高め、顧客との絆を強めてくれるでしょう。
コラム執筆者プロフィール
岩井信也
日本ダイレクトマーケティング学会本部理事(事務局長)
(株)ブラックス 取締役
(株)日本能率協会マネジメントセンター パートナーコンサルタント
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