マクドナルドの復活に学ぶ〜すべての答えは顧客の声にある!

2019/05/28
更新日:2019/05/30
マクドナルドの復活に学ぶ〜すべての答えは顧客の声にある!

「マーケティングは大切と言うけど、何から手をつければいいんだろう?」そんな疑問にダイレクトマーケティングのプロがお応え。世の中の販促マーケティングの実例から重要なポイントを分析し、明日から使える実践的ノウハウとしてわかりやすくご紹介します!

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マクドナルドの業績がここ数年好調です。2016年12月期決算で3年ぶりの黒字となり、それから2年後の2018年12月期の決算資料によれば、店舗数が10年ぶりに純増すると共に、1店舗当たりの平均月商が約1,500万円と、上場来最高となったそうです。
http://www.mcd-holdings.co.jp/ir/library_result/

外食産業の厳しさを考えると、予断を許さないところはありますが、マクドナルドがかつての不調からどうやって回復したのかを知ることは、この長引くデフレ時代において他の業種にとっても大きな示唆が得られそうです。

今回は、そのマクドナルド復活のマーケティング施策を、顧客の声の活かし方という視点で眺め、自社のマーケティングに応用するヒントを得たいと思います。

1. データで効率のみを追い求める怖さ

マクドナルドは、その広告宣伝のユニークさなどでもよく取り上げられますが、実はマーケティングの最も基本的な部分を実践する会社としても有名です。

売上を構成しているのは客数と客単価ですが、客単価アップの方法には、何かを一緒に売る「クロスセル」と、より高額の商品を売る「アップセル」があります。マクドナルドと言えばすぐ思い浮かべるセット販売の「ポテトはいかがですか?」というセリフはクロスセル、「お飲み物のサイズは?」というのはアップセルを促しています。

また、客数については店舗数を拡大していくことによって増やす方向と、1店舗あたりの来店客数を増やす方向がありますが、「2018年に店舗数が10年ぶりに純増」とあるように、かつてマクドナルドは店舗数が減り続けていた時期があり、規模よりも店舗効率を重視していたことが伺えます。同時期は牛丼チェーンなども低価格路線に突き進んでいましたから、非常に厳しい戦いを強いられていたのは確かです。

この客数と客単価、そして店舗効率を主なマーケティング評価指標として見ることは、決して間違いではありません、実際、マクドナルド復活の証とされている冒頭の数字も「売上」、「店舗数」、「一店舗当たりの平均月商」です。

単価と滞在時間で顧客層の分布を確認する


しかし、これらの指標では表現できていない大事な要素が一つあります。それが「顧客満足」です。顧客満足は、「価格」、「品質」、「お店の居心地の良さ」、「接客の気持ちよさ」などに分解できますが、これらは自社が最も重要視する顧客層を狙い、そのニーズに合わせて整えていく必要があります。

それでは、マクドナルドが最も重要視すべき顧客層とは、何だったのでしょうか?

2. 顧客の声を拾い直したカサノバ社長

2018年に1店舗当たりの平均月商が上場来最高となった業績回復の裏には、2015年に異物混入トラブルも加わって急落した、ファミリー層(主に若い母親)からの信頼を取り戻すため、もう一度「マクドナルドに何を求めているか」を、カサノバ社長が丹念に顧客の声を拾い直すところから始まった、と言われています。とりわけカサノバ社長が重視したのは「ママ」でした。この時期の取り組みは、日本マクドナルドホールディングス株式会社のニュースリリースで追いかける事ができます。

2105.05.11 Mom's Eyeママズ・アイ・プロジェクト
http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2015/csr/csr0511a.html(一部引用)

"食品について特に厳しい目を持つのは、いつも家族のことを想う母親(ママ)である"との考えにもとづき、現役のママたちに日本マクドナルドの店舗や農場、オフィスなど食の安全・安心に関わる現場を直接確認していただき、その模様を特設WEBサイトや各種ソーシャルメディア、店頭配布のリーフレットなどを通じて広く公開してまいります。

2015.12.17 サラ・カサノバが日本全国のお母さんたちと話し合う活動
http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2015/csr/csr1217a.html(一部引用)

この「タウンミーティング with ママ」ではサラ・カサノバが計352名のママとお会いし、食の品質向上のために、また安全・安心に関することから店舗体験の向上まで、話し合ってきました。ママの意見から得た気付きは、マクドナルドの食の品質や安全を更に高めていくための活動や、サービスの進化の一部として組み込まれていきました。ママの意見から生まれ、2015年中に実現してきたアクションとして、「WEBサイトメニューページの改善」、「主要商品パッケージのQRコードをより大きく分かりやすく改良」、「野菜が多く、温かいメニューとしてスープの提供開始」、「ソフトツイストのカップ提供」などがあります。

こういった、顧客の声を聞くことは、マーケティングに迷った時の王道とも言えますが、その方法にはいくつかあります。WEBサイトやコールセンター、店頭などで直接集まる顧客の声を別にすると、大きく以下の3つの調査方法があります。

顧客の声を聞くための3つの調査方法


アンケートは、特定の評価項目について毎年定点観察したい場合などに活用されます。5〜10段階などで各項目のスコアを出し、時系列、年齢、性別、地域など様々な視点でスコアを比較することができますし、自由記入欄で生の声を集めることが出来ます。顧客満足度調査が典型的です。

カサノバ社長が行ったのはグループインタビューに該当するものです。グループインタビューは司会進行を専門家に任せて、あるテーマに関するグループメンバーの発言を、別室でマジックミラー越しに観察する方式をとる事も多いのですが、カサノバ社長は直接対話する方法を選んでいます。前者はより分析的に観察したい場合に向いていますが、後者は直接コミュニケーションをすることでより顧客の声を肌感覚で掴みたいという社長の意思の現れでしょう。

デプスインタビューはグループインタビューよりもフォーマルに1対1で長時間行われるインタビューで、デプス(深層)という名前の通り、いくつかのテーマをどんどん掘り下げていく形式です。

グループインタビューとデプスインタビューの使い分けですが、前者は「多くの意見やアイディアを引き出す」ために、後者はインタビューを受けることで特定の行動の理由や、深い動機まで引き出したい場合に向いています。いずれにしてもキーワードは「引き出す」です。そうすることでアンケートの自由解答欄以上の価値が生まれます。

ちなみに筆者は、自社のオンラインストアのリニューアルの際、両方を実施した経験があります。マジックミラー越しに自社の商品やサービスの強み、弱みに関するグループインタビューを観察したり、個別に現在のサイトを実際に操作してもらいながらじっくり意見を聞いたり、非常に有意義でした。

3. 顧客の声の先にあるもの〜顧客本人も明確に気づいていない欲求に応える

アンケートや通り一遍なヒアリングだけではなく、前述のようなグループインタビューやデプスインタビューで顧客の声を丁寧に拾う必要があるのは、顧客自身も明確に言語化できていない潜在的な欲求まで、マーケターは見抜く(=インサイトを得る)必要があるからです。これは、「既存商品やサービスの改良」からさらに一歩進んで、「革新的な新商品、サービスの開発(イノベーション)」に取り組む際の重要なポイントです。

データに現れる、来店客数や単価、顧客満足度などの数値情報は、「何が起きているのか」をすばやく把握することや、対前月比、対前年比など比較によって、「どう変化しているのか」を理解する上で非常に重要です。

一方で、「なぜそれが起きているのか」、「それはどのように起きるのか」を知るには、数値に置き換えられない言葉や態度を通じて表現される顧客の声が、解決のキーになることが多くあります。

さらに、この言葉も字句通りの意味だけでなく、いわゆる文脈やニュアンスといった要素の理解も重要です。ですから、インタビューの際には観察者はマジックミラー越しに別室にいたり、ビデオ撮影などして、表情や仕草も含めたメッセージの理解に努めたり、さらに相手の発言や回答を深めるための質問(「〜についてもう少し教えて下さい」など)をするなどして様々な情報を引き出していくのです。

こういったプロセスは顧客のニーズとウォンツの両方を導くことにも繋がります。マーケティング用語集一覧のウォンツとは何かに以下のようなニーズとウォンツの関係性が示されていますが、

ニーズウォンツ
喉が乾いている 水が飲みたい
人参の皮むきが苦手 ピーラーが欲しい
一人で寝るのが寂しい 抱き枕が欲しい

顧客の声からまず拾いたいのは上記でいう「ニーズ」の方です。

まず、「人参の皮むきが苦手」という発言がインタビューの中にあったとします。この時、「そもそも包丁を使わずに皮をむきたい」という更に深い声にまでたどり着ければ、「ピーラー」という新しい商品開発に結びつきますが、そうでなければ「野菜や果物の皮をむくことに特化した包丁」やその包丁を使った「上手な人参の剥き方の動画」を作ってしまうかもしれません。顧客は、ピーラーというものの存在を知らないうちは、ピーラーが欲しいと言うことは出来ません。そこで、ニーズの中心にある「困ったこと」、「嫌な感情」、「済ませたい用事」などを浮き彫りにして、それを解決する商品、サービスの形を描いていくのです。

まとめ

データドリブン・マーケティングという言葉に象徴されるように、マーケティングの意志決定において、「データ」は非常に重要です。しかし、数値として測定可能なデータ分析以外にも、顧客の声のような「数値に現れにくい評価」は、市場に存在しない新しい商品やサービスの開発をしたい時など、自社の取り組みを根本的に見つめ直したい時にこそ大いに力を発揮します。
今回ご紹介したマクドナルドの事例や調査方法の使い分けは、業種や事業規模の違いを超えて、自社の顧客との向き合い方、イノベーションにつながるインサイトの引き出し方の良いヒントになるのではないでしょうか。

コラム執筆者プロフィール
岩井信也
日本ダイレクトマーケティング学会本部理事(事務局長)
(株)ブラックス 取締役
(株)日本能率協会マネジメントセンター パートナーコンサルタント

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