元気農家に学ぶ〜売上増は顧客リストの充実から!

2019/04/15
更新日:2019/04/15
元気農家に学ぶ〜売上増は顧客リストの充実から!

「マーケティングは大切と言うけど、何から手をつければいいんだろう?」そんな疑問にダイレクトマーケティングのプロがお応え。世の中の販促マーケティングの実例から重要なポイントを分析し、明日から使える実践的ノウハウとしてわかりやすくご紹介します!

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最近、「農業で年収○○○○万円!」とか「稼げる農業!」のようなタイトルの書籍やWEBサイトを見たことがある方が結構いらっしゃるのではないでしょうか。

筆者の知人にも、農業委員会とのやりとりなど高いハードルをクリアして、奥多摩で農業を始めた人がいます。実は今、農業はダイレクトマーケティングを活用した事業分野として、静かなブームになりつつあります。

確かに、特徴のある商品を直営店やネット通販で販売し、SNSなどを活用したコミュニケーションでファンづくりをする、という手法は農業にも大いに当てはまりそうです。今回は、ヤル気のある農家がどのようにダイレクトマーケティングの手法を活用して、「稼げる」ようになったのか、

・顧客リストの獲得
・買う気にさせるクリエイティブ
・何度も購入し、口コミも広げてくれるファンづくり

という視点から、元気農家のダイレクトマーケティング活用術を見ていくことにします。

1.自社販路の開拓〜顧客リストの獲得

農業では通常、農協や市場、小売店を経由して消費者の手に製品=農作物が渡ります。その意味では「製造業(メーカー)」に近い性質です。生産者である農家と消費者は直接繋がっていません。

長所は国や自治体の農業保護政策や、安定した出荷先といった恩恵などですが、自分で売値を決められない、消費者との直接コミュニケーションが出来ないなどのマーケティング上の限界がどうしてもあります。

この限界を、直売所での対面販売、ネット通販、SNSの活用などダイレクトマーケティングの手法で打ち破り、独自のポジションを確立したのが今回事例で取り上げる農家さん達です。

特に、これらの農家さん達が口をそろえて強調しているのは「直販=顧客リストの獲得」です。顧客リストを獲得することで、

1) 消費者の顔が見えるのでモチベーションが上がる
2) DM発送など継続して再販売のコミュニケーションが取れる
3) 一人ひとりの顧客の声から商品開発やサービス改良のヒントが得られる
4) ファン化した固定客が口コミで新規顧客を紹介してくれる

といった利点が生まれます。これらは正に農家に限らず通用する話ですよね。

また、顧客リストの獲得は成長戦略(そういえば安倍内閣でもキーワードですが)を描く上でも重要です。みなさんは、ダイレクトマーケティングでの売上を分解した計算式として、

顧客数×1回購入単価×年間購入回数=年間売上

という、式を見たことがあるかもしれません。

以下の事例では、この式のどの部分を向上させようとしたかも気にしながら見ていただくとより一層理解が深まると思います。

2.「顧客数」が「見込客×成約率」であることに気付いた農家が打った手

北海道に寺坂農園というメロン農家があります。年商1億円を稼ぐ農家として有名になり、マスコミでも取り上げられています。農園主の寺坂祐一さんは、著書(*1)の中で、以下のように述べています。

「私がメロン直売所をオープンして3年目くらいの数字を当てはめてみます。
見込客は、親戚・知人に『直売をはじめたのでよろしくお願いします』と、住所・名前を集めたり、直売所で購入したお客様に住所・名前を記入して頂いたり、DM送付郵送可能なお客様を1000件獲得していました。(中略)
そのうち、8%の方からご注文を頂くことができました。まずまずの数字です。
そして単価は、当時、直売をはじめたばかりで自身がなかったので、メロン2玉入りで3000円。頻度はDM郵送でのご案内を一度しただけだったので、1回です。

では計算してみましょう。
(見込客1000人×成約率8%)×単価3000円×頻度1回=売上24万円」

筆者は、通販業界に長くいたのですが、これは通販企業の事業計画の立て方と全く一緒です。ここで注目して頂きたいのが、顧客数を「見込客」と「成約率」に分解しているところです。この2つを向上させるには、マーケティングの取り組みとしては別々の打ち手が必要です。

ダイレクトマーケティングの方程式


寺坂農園では、まずこの見込客=住所やメールアドレスがわかっていてDMが送れる人たち、を確保するために、直売所の最も大切な役割を<売ること>ではなく、<顧客リスト(お客様情報)の獲得>と位置づけ、スタッフ教育もしているそうです。

こうして獲得した顧客リストへ、今度はDMを送るわけですが、このDMのクリエイティブの質の高さが成約率向上の鍵だとして、以下のノウハウも書籍で公開しています(一部抜粋)。

封筒のティザーコピー
→開封率を上げるために封筒に書くコピー
例:「夏のうれしい感動野菜。北海道の旬の味覚が勢揃い」

キャッチコピー
→美味しいメロンを自分で食べたい、ギフトで送って喜んでもらいたい、という顧客の要望に対する具体的なベネフィットを顧客の声を使って表現。
例:「今まで食べたメロンが何だったのかと思うほど美味しいメロンでした」

パンフレット(商品チラシ)とコピーライティング
→キャッチコピーに続いて「どのように育てているのか」「なぜ○○○をやっているのか」、物語・ストーリーを伝える

写真(シズル写真)
→シズルとは「商品の質感」のこと。美味そうな写真。農産物そのものの写真とともに、それを使った料理の写真も載せる。

ベネフィットレター
→DMに同梱する顧客への手紙。「このDMをなぜ、あなたにお届けしたのか」を手書きしたものを、手紙用の用紙にスキャン印刷

お客様の声
→顧客の「心のブレーキ」を外すために、購入した顧客の生の声を掲載。ウソ偽りなく感じてもらえるように、頂いたハガキをそのままスキャンして掲載

これらの活動を続けた結果、今では以下のような計算式になっているとのことです。

(見込客2万人×成約率13%)×単価15,000円×頻度2.5回=約1億円

上記のような取り組みは、よく通販DMの教科書に書いてあることなのですが、筆者が素晴らしいと思うのは、これらを独学で試行錯誤しながら改善を続けているということです。


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3.ネットを使ったファンの増やし方

こうして顧客リストを充実させていった後、次に課題となるのは「維持」と「育成:単価×頻度の向上」(いわゆるCRM)ですが、最近ではこれを「ファンを増やす」という考え方で取り組む企業が増えています。前回取り上げた株式会社ZOZOでは、CRM:Customer Relationship Managementを、CFM:Customer Friendship(友達) Managementと言っているそうです。

それは収益源として顧客を囲い込む、という発想ではなく、ZOZOらしい顧客に喜んでもらえるパーソナライズメッセージの配信、顧客対応を目指し、結果として顧客との良好で長期的な関係を築くことを目指していると、ある学会主催の講演会で聞いたことがあります。

この顧客との関係づくりについて、菜園生活「風来」代表の西田栄喜さんは、著書(*2)で、以下のように述べています(一部抜粋)。

「ホームページ(HP)はフォーマルな場、日々書く日記(ブログ)はセミフォーマル、フェイスブックなどのSNSは普段着の感じで、と使い分けています。」

「漠然としたSEO対策はせずに、いかに「風来」で検索してもらえるかに力を入れるようにしました。そのために、毎日ブログやフェイスブックなどで情報を出し続けています(中略)「無農薬野菜」で検索すると、20位以内にコンスタントに入るようになってきました。」

「農家とネットの相性で強いところが、生産過程を見せられるということ。
(中略)「先日いただいたキムチ、日記に載っていた3月1日にまいた白菜ですよね。白菜が育つ様子を想像しながらいただくと、おいしさもひとしおでした」という声もいただきました。その方は、もちろんリピーターになっていただいています。」

「2014年以降、年1回、私が主催となって「農コン」なるものを開催しています。「農コン」とは、「農家とコンパ」の略で、フェイスブックでイベントを告知するのですが、30名の募集が一日で満席になり、毎回、多くのキャンセル待ちと、開催した本人もビックリするくらいの人気です。(中略)即効性はないかもしれませんが、互いに信頼できれば、末永くおつき合いできますし、長い目で見れば、こちらのほうがプラスになります」

これらの記述からは、

HP、ブログ、SNSの各特性を活用した、意図的なツールの使い分け
・生産者としての誠実な情報開示による、顧客の共感を得るコミュニケーション
・SNSのコミュニティとしての特性を活かした、リピーター=ファンづくりの長期作戦

といった「明確な目的意識」をもった戦略性を感じ取れます。

良質な顧客リストを育むWEB戦略


先の寺坂農園さんと同様、一つ一つの打ち手がダイレクトマーケティングの方法論に忠実で、かつ徹底して実践していることに感心させられます。

こういった取り組みの結果が、顧客の高い継続率や単価、購入頻度としてあらわれ、結果としてLTV(生涯価値)の高い顧客の多い、充実した顧客リストになっていくのです

まとめ

一見、マーケティングとは無縁と思われる農家が実践する手法は、自社の製品やサービスに共感してくれる良質な新規顧客リストを獲得し、維持・育成するためのコミュニケーションを継続的に図る、というダイレクトマーティングの王道でした。

そして短期的な規模の拡大=顧客リスト数の拡大よりも、顧客リストの質の充実=LTV(生涯価値)視点での長期的な利益を追求しています。

さらに繰り返しになりますが、本当に素晴らしいと思うのは、一つ一つの手法もさることながら、目的意識に裏打ちされた徹底度です。

今回の事例で取り上げた2つの農家は、本当に「顧客との長いおつき合い」を基本理念にDMを作ったり、ブログを更新したり、販売所での接客をしていることが伝わって来ます。

もちろん、こういった成功の裏には無数の失敗、試行錯誤があるでしょう。それも含めて経営者やスタッフの熱意の賜物だと思います。

業種は違えど、少数精鋭でマーケティングを行っているチームにも良いお手本になるのではないでしょうか。

【参考文献】

*1「直販・通販で稼ぐ!年商1億円農家」 寺坂農園株式会社 寺坂祐一著,同文舘出版
*2「農で1200万円!――「日本一小さい農家」が明かす「脱サラ農業」はじめの一歩」 菜園生活「風来」 西田栄喜著,ダイヤモンド社

コラム執筆者プロフィール
岩井信也
日本ダイレクトマーケティング学会本部理事(事務局長)
(株)ブラックス 取締役
(株)日本能率協会マネジメントセンター パートナーコンサルタント

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