なぜ「デジタル×紙×マーケティング」なのか!?変わる消費者と効果を生むメディアの複合活用【前編】

From: ダイレクトマーケティングラボ

2020年01月21日 00:00

この記事に書いてあること

トレンドの移り変わりが激しいデジタルマーケティングについて、マーケターが押さえるべきトレンドをまとめました。デジタル変革期に欠かすことの出来ない最新情報をぜひご覧ください。

消費者のニーズが多様化している現在、アプローチ方法も顧客に合わせて変える必要があります。技術革新により、紙DMでも1to1のコミュニケーションが可能になりました。その背景と、デジタルと紙を複合的に活用し、顧客とのコミュニケーションを最適化するポイントについて、WEBマーケティングの第一人者である本間充氏にインタビューしました。

マーケティング戦略を変えた技術革新

― マーケティングの手法が変化している市場の背景に何があるのでしょうか

まず、大量生産を前提としてきた製造業の体制が変わったことが挙げられます。技術革新で多品種・少量生産でもコストが見合うようになったことが大きいと思います。同じ製品を大量に作るのではなく、消費者が欲しい仕様でモノを作る。消費者の選択肢が広がった結果、マーケティング戦略が見直され始めたといえます。

消費者にとって自分にふさわしいものは、という個々の問いに答えられるメッセージが必要となってきたのです。そのメッセージをどのメディアで届けるかが重要です。

かつて、消費者に向けてのキーメッセージは“一番売れています”でした。今ではそれが消費者にとって何の意味も持たなくなっています。

― どのメディアが誰にリーチできるかが分からなくなっていませんか?

“リーチ”という言葉は大量生産時代のものだと思います。広告主や広告代理店には極めて重要ですが、消費者にそれは関係ありません。広告の量とリーチ数が企業の価値を高めていた時もありましたが、消費者にとってはたくさんのコマーシャルよりも自分にとって必要なメッセージが届くかどうかが重要です。

マーケティングの視点が、マス広告で多くのお客様を獲得するというモデルから、長く使ってもらえるお客様に丁寧にメッセージを送るモデルへと動いているのは、そうした背景があるからです。 長く付き合うお客様はそれほど多くありません。だから個々の顧客がどのようなコミュニケーションを欲しているのか、どのメディアに接しているかを把握し、そこにふさわしい情報を置けばメッセージは届きます。

― マーケティング戦略の軸がロイヤルカスタマー化の方向に移っているということですね

そうだと思います。新しい顧客の獲得にしても必ずしも企業がやるべきものではなくなっています。インターネット上で消費者同士がリアルにつながって、あるユーザーが他の人に「この商品が良かった」と言ってくれれば、新規顧客を獲得できるチャンスが増えるからです。つまり、顧客に、なぜその商品に価値を感じて、使い続けているかの理由を認識してもらうことが重要なのです。それには画一的な広告メッセージよりも、お客様一人ひとりへの丁寧なメッセージが求められてきます。

現在、紙メディアでも一枚ごとに内容を変えることができるバリアブル印刷が登場し、顧客一人ひとりに違うメッセージを送ることができます。特定のお客様と長くお付き合いする産業革命以前のビジネスモデルに戻るといえますが、ビジネスの選択肢が増えたという見方もできます。

メディアは顧客が決める時代

― 多くのデジタルメディアの登場が逆に、紙メディアの価値を改めて浮かび上がらせた気がします

“紙”という物理的なメディアのパワーが再確認されているのだと思います。企業にパソコンが導入され、オフィスオートメーションが始まった当初はペーパーレスにしようと言われていました。それで不要な書類は確実に減りましたが、オフィスに紙の書類はまだ残っています。紙と電子が峻別されて、必要な紙があることと、デジタルの限界点が明らかになったことで、紙メディアの価値を高めたといえます。

印刷物はもともと一定のクオリティが保てる優位性があります。カラーマネジメントで同一の色を安定して再現し、フォントの使い方も考えられて作られます。画面の解像度が72dpiであるのに対し、印刷は1,200dpiが標準です。デバイスに依存されず、クオリティを保ってお客様に届けられる点が、デジタルメディアとの大きな違いです。 もう一つ、紙メディアは物質なので、良い紙、硬い紙、光沢のある紙と、表現が多彩です。デジタルメディアにはない、重さや匂い、手触り感といった人の五感に訴えられる点も大きなメリットだといえます。

スマートフォンの画質はきれいになり、ハイビジョンと変わらない品質です。ただ、A4サイズぐらいの文字量になると、紙メディアではストレスなく読むことができるのに、スマートフォンでは読みにくい。逆にスマートフォンは短い文章のやり取りに長けています。デジタルメディアが登場して20年が経過し、ようやくメディアのTPOが理解され始めたのだと思います。

紙メディアとデジタルメディアの特性

―適材適所でメディアの使い方が明確になってきたということですね

多くのデジタルマーケターはインターネットでマーケティングがクローズすると思っていました。しかし、電子メールは無料で早く届く割に開封率が低いので、最近郵便物で送ろうという動きが出てきました。紙のカタログをやめようという企業がある一方、その価値を認めている企業もあります。ようは届ける先のお客様が望む形のメディアを使おうという方向にシフトし始めています。

メディア、コミュニケーションの選択肢がお客様側にある以上、紙が良ければ紙、電子メールで十分なら電子メール、フェイス トゥ フェイスが必要だったらフェイス トゥ フェイスを使い分けることが重要です。お客様の理解が最も高くなる方法を、お客様と合意形成していくことが重要で、企業側がこのメディアと決めたり、一つのメディアで一斉にメッセージを送ったりする時代ではありません。

― 本間さんが、紙メディアもデジタルメディアだと明言されているのはなぜですか

今や、印刷のプロセスはほとんどがデジタル化され、入稿データもデジタル処理されています。印刷データ自体がデジタル化されているということは、紙メディアもデジタルメディアと言って差し支えないといえます。お客様ごとに内容を変えてパーソナライズ印刷することも可能で、デジタルメディアと変わらない機能を持つようになりました。紙という素材だけが物理的なもので、あとはデジタルです。

顧客データを活用したDM施策例

多くの映画館ではプロジェクターでデジタルデータを投影していますよね。スクリーンという物理的なものを使うから映画はアナログだ、と言わないように、紙メディアもデジタルメディアと認識した方が分かりやすいし、誤解がないと思います。

次回は、“デジタルも紙も”活用したマーケティング事例のご紹介と、デジタルと紙を複合的に活用するためのポイントについて、本間氏に語ってもらいます。お楽しみに!

後編はこちら↓

なぜ「デジタル×紙×マーケティング」なのか!?変わる消費者と効果を生むメディアの複合活用【後編】

本間 充 氏

1992年に花王株式会社に入社し、15年間社内のデジタルマーケティングに携わる。現在はアウトブレインジャパン、アビームコンサルティングの顧問となり、多くの企業のマーケティングの支援や、マーケティングのデジタル化を支援。ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、内閣府政府広報アドバイザーなども勤め、産業の発展に貢献。デジタル時代の人に寄り添うマーケティングについて、書籍『シングル&シンプル マーケティング』を宣伝会議から発売。

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