BtoB版「刺さるコミュニケーション開発」のPDCA

2019/04/04
更新日:2019/04/04
BtoB版「刺さるコミュニケーション開発」のPDCA

BtoB企業のマーケティングには、BtoC企業とは異なる戦略が求められます。本コラムでは抑えるべきポイントやツール、手法など、BtoBマーケティングの基本をわかりやすく解説します。マーケティングを始めたばかりの方も、これを読めばバッチリ!

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前回の連載では、BtoBビジネスでは意思決定の段階が多く、かつ複数の関係者が影響を与えるため、その各ステップでの顧客のニーズとそれに対する自社のコミュニケーション施策を設計することが必要。その設計方法として、カスタマージャーニーという考え方がある、ということを紹介しました。

今回はこのカスタマージャーニーの設計図=カスタマージャーニーマップを提示しながら、「顧客に刺さるコミュニケーション開発=最適な施策と顧客接点の組合せ」とはどういうものか、具体的にイメージしながら考えてみたいと思います。

Q:「刺さるコミュニケーションって、気の利いたコピーを考えるみたいなこと?」

A:「クライアントに『それを求めてた!』と言ってもらえる対応のことです!


■カスタマージャーニーマップを作ってみよう!

第1回、第2回で述べてきたように、BtoBの取引では、クライアントの持つ全社的な課題に対応することはもちろん、取引の各プロセスで登場する関係者それぞれの役割・役職に合わせた、具体的な「悩みや気持ち」にも対応する必要があります。

組織的に安定した品質で顧客体験を提供するためには、そうした顧客の「悩みや気持ち」に対して、マーケターや営業担当、コールセンターオペレーターがその都度考えて対応するのではなく、社内の知恵と経験を集め、「この時のこのコミュニケーションがよかった」というエピソードを共有・見える化し、「一連の打ち手=コミュニケーションの流れ」として整えることが重要です。

そのための優れた方法が、「カスタマージャーニーマップ」の作成です。

カスタマージャーニーマップを作成する際には、大きくは「顧客企業の各関係者は、どのようなタイミングでどんなことをしてほしいと思っているか」、「それに対する自社のコミュニケーションにはどのようなものがあるか」、「それぞれのコミュニケーションが、どの顧客接点を通じて提供されるのか」が明確に表現されている必要があります。

BtoCでもカスタマージャーニーマップは重要ですが、マップで表現する際の最大の違いは、BtoBでは「顧客企業の登場人物が複数いる」のに対して、BtoCでは「マップの主人公は基本的に一人」な点です。

それでは、以下、架空の「あるある」事例を見ながら検討してみましょう。

Q:「セミナーや資料ダウンロードから導入までなかなか進まないのはなぜ?」

A:「導入前に各関係者がどう検討を進めるかストーリーを作ろう!


■事例1 導入前プロセスのジャーニーの検討

BtoB商材の中には、世の中のニーズを先取りしているものの、まだ相手先企業においてはその商材に関する知識が不十分で、導入の意義から説明しなければならないものも数多くあります。

例えば、昨今の働き方改革に対応するための「業務改善ソリューション」、「組織風土改革サポート」などもそのひとつです。働き方改革が組織として重要な課題であることは、今やどの企業も認識しているでしょうが、そのための何か特定の商材となると、その良し悪しを判断する専門知識が不足していることが多いのではないでしょうか。

こういった商材を扱うときには、セミナーや資料提供を通じて顧客側の「啓蒙」を行いたいところです。しかし、この啓蒙は「担当者」レベルにのみ行うと、その担当者が上席者や経営層などの「意思決定権者」に説明を行った際、「なぜコストをかけてまでそれを行うべきか、そしてその商材は適切なソリューションなのか」が意思決定権者には判断がつかず、意思決定が先延ばしになりがちです。

ここはしっかり顧客企業の上層部から攻めて行き、担当者、ユーザー部門レベルへ検討の指示が出たら、彼(彼女)らが判断に必要な専門知識の提供や支援を具体的に行っていく段取りを「カスタマージャーニーマップ」に表現して、作戦を立てましょう。

導入前のカスタマージャーニーマップ

まず、導入検討段階で、管理職や経営層のような意思決定権者をマーケティング・コミュニケーションの対象者として設定します。これは「担当者→意思決定権者」ではなく「意思決定権者→担当者」という流れを作ることで、意思決定のスピードを上げ、自社の存在感を最初の検討段階からアピールする作戦です。

そのために、実際に各社が良く行っている方法は、経営層や担当部門責任者がよく購読している経済誌や専門誌への広告や経営者インタビュー記事の掲載、各種調査結果の発表などのプロモーション活動です。こういった活動は、会社のブランドイメージを高めると同時に、その記事を読んだ意思決定権者から、具体的な情報収集の指示が担当者に飛ぶことを期待しています。

こうすることで、担当者の仕事から「意思決定権者への導入意義の説明」という最もやっかいな仕事が無くなります。また、初回導入後に、より規模の大きい部門横断的なサービスを提案する際にも、担当者を超えた調整力を意思決定権者が発揮してくれる期待が持てるので、非常に発展性のあるコミュニケーションと言えます。

次に、導入の具体的検討や候補選定のための情報収集を行う担当者には、どのようなコミュニケーションを行えばよいでしょうか?

担当者がここでやりたいことは、「選定を行う際の基準」を自分なりに掴むことです。そこで、選定にあたって必要となる前提知識をまとめた情報サイトや、ガイドブックのダウンロード提供などは非常に効果的な担当者支援となります。「担当者が社内提案資料を作成しやすいようにする」というのは、BtoBマーケティングにおいてとても重要な考え方です

さて、選定の判断基準が自分なりに見えて来た担当者が次に望むことは何でしょうか?

そう、「無料体験」です。各候補の評価・決定にあたっては、購買の担当とは別にユーザー部門がある場合、実際にそのソリューションを使用する現場の不安感を解消する必要が有ります。そこで無料体験時には、体験後の簡易レポートの作成や導入後のサポートの説明などをすることで、「一連のソリューションとしての導入イメージ」を持ってもらいます。

こうすることで、担当者が意思決定権者に「ユーザー部門も納得しています」と報告できることで、その後のプロセスが加速します。

全体として見ると、顧客の立場にたった「導入までのストーリー展開」と、どのタイミングで、誰に、どのような心理・ニーズに対して、どの接点で適切な顧客体験を提供するのか、というコミュニケーション設計になっていることが重要で、それが表現されているのがBtoBマーケティングのカスタマージャーニーマップだということです。

Q:「一旦取引が始まった企業にさらに深く関わるにはどうしたら良いのかな?」

A:「導入後の評価のタイミングから逆算してコミュニケーション計画を立てましょう!」


■事例2 導入後プロセスのジャーニーの検討

今度は「導入後のストーリー展開」ついて、業務支援ソリューションを例に考えてみます。

筆者がかつて人事部に在籍していた際、毎月長時間の残業をしている課員がいました。その残業の多くは労務管理業務で、全社員の出退勤表の目視チェックと、修正が必要な箇所に関する各社員とのメールのやりとりでした。

その課員の負荷を軽減するために、入退室管理、出退勤管理、人事台帳などが統合された人事業務パッケージソフトの予算を組んで1千万円近い値段で購入しました。

しかし、驚くべきことに?実際に本人がそのソフトを使い始めたのは1年以上経ってからでした。その理由は「使い方が良くわからず、勉強する時間も取れないから」でした。これは本当に業務ソリューション導入企業の「あるある」だと思うのですが、導入後のケアが足りない典型例です。

昨今では、こういったパッケージソフトの多くは、初期導入コストがかからないクラウドサービス型のビジネスに移行しています。このビジネスモデルで、もしこのような「導入はしたけれど活用していない」という状態になったら、すぐに1回目の契約更新時に契約は打ち切られ、継続利用による課金収入が無くなることになります。これは死活問題です。

最近よく見聞きするようになった「カスタマーサクセス=顧客に成功体験を継続的に提供する」という考え方は、まさにこのビジネスモデルの変化が背景にあります

そこで、さきほどの導入支援のための各種活動と同等かそれ以上に、継続利用を促すマーケティング・コミュニケーション施策を展開する必要が出てきます。導入後のどのような場面で顧客がストレスを感じるのか、そしてそれに対してどのような対応策があるのか、ということをカスタマージャーニーマップに表現するのです。

例えば、初回契約更新時までの期間が1年だとします。この場合、先程の事例のようにユーザーがずっと使用開始しないのを放置していたら、ほぼ確実に契約更新はされないでしょう。

そこで、導入直後の利用開始支援、数ヶ月使用後の感想や要望の聞き取り、習熟後の他社ユーザーとの情報交換などのステップに切り分けて、必要なコミュニケーションをストーリーとして設計して行きます。


導入後のカスタマージャーニーマップ


まず、導入直後の利用開始支援から見ていくと、この段階での顧客の「勉強しないとわからない」という感情に対して、担当者のための実践セミナー、カスタマーサポートによる初期設定の遠隔サポート、同じ悩みを抱えるユーザー会などがあれば効果的です。

「ユーザーを孤独にさせない」というのがここでのポイントです。

次に、この機能は使いづらいので、○○できるようにして改善して欲しい、といった「改善要求」もよくでてきます。これも、対応しないと来季の更新はしない、という結果に結びつく可能性が有ります。
一方で、全ての改善要求には答えられないですし、操作に習熟すれば気にならなくなるレベルの話かもしれません。

こんなときは「FAQ」による対応が典型的なのですが、これも「顧客の良質な体験を重視」するのであれば、同じような課題をもった顧客同士の教え合いの場を作るようなことも多くの企業が行っている方法です。この点はBtoCにも言えることで、よくHP上のFAQのコーナーに顧客の掲示板も用意してあって、ベテランユーザーが新規ユーザーの質問に答えたり、活用方法の紹介をしたりしていることが有ります。また前述したようなユーザー会の存在も、顧客満足度を上げることに大いに役に立つでしょう。

こういったサポート環境を用意し、手厚くケアすることが継続契約に結びつくというわけです。導入直後の習熟期を上手く乗り越えれば、本来の効果が実感でき、次の契約に向けた高い評価が得られる、ということになります。

そして、「効果を実感できた」段階に達した担当者に、ユーザー会や外部イベントで発信する依頼をするのは、継続顧客をさらにファン=優良顧客化するのに効果的です。「他社への推奨」は典型的なコミュニケーション開発上のゴールです。

まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。このようなBtoBマーケティングのカスタマージャーニーマップをマーケター中心に、各顧客接点の担当者が集まって共同作成すれば、具体的な顧客像も共有でき、それぞれがどのようなコミュニケーションを顧客とすべきか、「見える化」できます。

また、こういった取り組みにもとづくコミュニケーションの流れは、顧客企業にとっては「一貫した顧客対応」として評価できます
改めて表題の「刺さるコミュニケーション開発」のPDCAを以下箇条書きで表現すれば、

Plan:カスタマージャーニーマップの作成 (各顧客接点担当者から「顧客企業の関係者ごとに刺さったエピソード」を集める上で、共同作業が望ましい)

Do:カスタマージャーニーマップに基づく各種コミュニケーション施策の実行

Check:ジャーニー上の各ステップでの満足度評価、継続率、クロスセル/アップセルなどの指標確認

Action:新たな「刺さるコミュニケーション仮説」のアイディア出し、マップのバージョンアップ

ということに成ります。 事例で挙げた取り組みも参考にしながら、ぜひ自社のカスタマージャーニーマップを皆さんが主導して作成してみて下さい。

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