効果的な「コミュニケーション設計」を考えよう

From: ダイレクトマーケティングラボ

2019年03月07日 00:00

この記事に書いてあること

BtoB企業のマーケティングには、BtoC企業とは異なる戦略が求められます。本コラムでは抑えるべきポイントやツール、手法など、BtoBマーケティングの基本をわかりやすく解説します。マーケティングを始めたばかりの方も、これを読めばバッチリ!

BtoBマーケティングの基本的なプロセスやデジタルの活用など、今BtoB企業の担当者が押さえておきたい最新のトレンドを紹介するコラムとしてスタートした本連載。前回は第1回目ということで、BtoCマーケティングとの違い、とりわけ「組織的対応」という視点からBtoBマーケティングの特性をご紹介しました。

それを受けて第2回目は、「顧客とのコミュニケーション設計の考え方」をテーマにお届けします。

Q:「顧客とのコミュニケーションって、普段の営業活動で十分?」

A:「営業以外の部署も連携して計画的なコミュニケーションを行うことで、他社との差別化を図りましょう!」

CRMという考え方

皆さんは「CRM:Customer Relationship Management(顧客関係管理)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。CRMはBtoBでもBtoCでもマーケティング上のキーワードの一つなのですが、使われ方が非常に曖昧な言葉です。

狭い意味のCRMは顧客の管理を行う特定のツールやソリューションを指しますが、本コラムではもう少し広い意味で、企業の継続的な成長戦略としての、「顧客獲得から維持、育成のための一連のコミュニケーション設計と、それを元に各部署が連携して取り組む活動」のこととして考えます。

BtoBではCRMが特に重要になる

前回のコラムで、自社の大口取引先について、縦に購買プロセス、横に関係者を並べ、各ステップで誰がどのような関心事を持ち、それらに対して自社のどの部門が適切にコミュニケーションできるかを整理した表の作成をオススメしましたが、それはまさに上記のようなCRMの考え方に基づいたものです。

組織と組織の関係であり、検討期間や導入後の関係が長く継続するBtoBにこそ、CRMの考え方による適切なコミュニケーションで、他社と差別化することが効果的なはずです。

CRMに基づいて顧客コミュニケーションを設計しよう

カスタマージャーニーに沿った顧客主体のコミュニケーションを考える

BtoBマーケティングでは、元々「セールスプロセス管理」という考え方があります。

セールスプロセス管理では、初回商談からヒアリング、見積りの提示、成約、アフターフォローなどの一連のプロセスにおいて、各顧客がどのステップにいるのかを可視化して、次のステップへの移行率を上げていくことを目的とした、各種研修やツールの導入などが盛んに行われています。

よく知られているのは「Salesforce(https://www.salesforce.com/jp/products/sales-cloud/overview/)」というツールで、「商談成約率を向上させよう」、「すべての顧客情報と商談を管理・共有。顧客との関係を一元的に把握」と謳っています。

こういったツールは確かに便利なのですが、「各ステップで個々の顧客とどのようなコミュニケーションを取るべきか」という社内の共通認識が無いと、単なる各営業担当の日報と顧客リストの共有ツールに終わってしまいかねません。

そこで、少し前から「セールスプロセス=売込みのプロセス」だけでなく、「カスタマー・ジャーニー=顧客が何かを買おうとする時の感情や行動の変化」に焦点を当てようという動きが広まりつつあります。

この動きの背景には、先ほど述べたCRMの発想が根底にあります。

BtoBのカスタマージャーニーを考える際には、「顧客サイドに関係者が複数いることが多い」というBtoBの特徴を踏まえて、顧客企業の意思決定プロセスと、各ステップの登場人物ごとに、どのような感情と行動の変化が必要か考えることになります。

それでは以下、具体的に見て行きましょう。

Q:「コミュニケーション計画って、具体的にどう考えれば良いの?」

A:「もし自分が顧客の各部門・担当者ならどのように、どんな情報が欲しいか考えてみましょう!」

プロセスごと・関係者ごとの顧客のニーズを整理する

下図は第1回目コラムに示した意思決定プロセスとその関与者に、各ステップで行うコミュニケーション例を対応させたものです。前章で述べたカスタマージャーニーの観点で言えば、各ステップでのニーズへの対応の良し悪しが、顧客の感情と行動の変化(その対応に満足して次のステップに行くか行かないか)を左右する、ということになります。

各ステップでの顧客ニーズとコミュニケーション例

例えば、最初のステップの「導入の検討」に際してのコミュニケーションとして、そもそも顧客が持つ漠然とした「将来に向けてこのままではいけない。しかし何をすればよいのかがよくわからない」といった状態に対して、オウンドメディアやセミナーなどを通じて顧客の問題意識を明確化する情報提供を行えれば、顧客の中での自社の位置づけが高まります。

また、「取り組む課題は見えてきた。この課題に対応したソリューションはどのようなものがあるだろうか」というステップになったら、ユーザー部門も含めたヒアリング、コンサルティングなどを行います。このステップでは前回も触れた、顧客の顧客まで見据えた価値提供という発想が重要です。

ソリューションに対する顧客の理解が深まると、競合も含め候補選定から評価・決定というステップに行きますが、その際も「売り込み」というより「担当者、意思決定権者、ユーザー部門などが社内の意思決定上必要な情報を、それぞれの相手の立場に立ってタイムリーに提供する」ことが大切です。

また、ここまでのプロセスで蓄積した、各関係者とのコミュニケーションとそれへの反応は、都度記録し、自社内で共有できるようにしておきましょう。その後の取引継続や、仮に今回失注したとしても、次回営業アプローチの際の財産になります。また、一旦進んでいたプロセスが、異動や経営方針の変更などで行ったり来たりすることもありがちですが、そういったときにも臨機応変に対応することができます。とかく新規受注はスムーズに進みづらいものですが、これは取引を多面的、長期的な視点で捉えるBtoBの性質において、大事なポイントです。

そしてCRMの考え方においては、導入時、導入後の対応こそ重要です。「この商品、サービスを導入して失敗だった」という後悔の声は、皮肉にも、顧客満足度の向上を支援するはずのCRMソリューションに対してさえもよく聞かれます。

それを防ぐには、「導入教育、トラブル対応を親身にやってほしい」というユーザー部門のニーズを真剣に捉え、トレーナーの派遣、マニュアル作成など、通常の保守・トラブル対応以上の対応も提案に盛り込み、丁寧に実行することも重要です。

顧客の満足度を高め、継続的なパートナー関係を構築するために、このような各ステップでの顧客とのコミュニケーション計画を立案し、あらかじめ自社の各部門の役割を明確にしておくようにしましょう。

まとめ

こうして見ると、CRMを戦略として遂行するには、改めてマーケティング部門と営業部門はもちろんのこと、アフターサービスや顧客対応窓口などの部門など、全社横断的な顧客関係構築に対する連携がないといけないことが分かります。CRMへの取り組みは、組織風土改革でもある、と言われるのはそのためです。

次回は、自社における打ち手のイメージがより湧くよう、業種、規模の違う企業をいくつか組合せて、BtoBにおけるカスタマージャーニーの各ステップにおける施策の具体的事例をご紹介します。

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