5F(ファイブフォース)分析とは?

From: ダイレクトマーケティングラボ

2018年10月04日 00:00

この記事に書いてあること

マーケティングや販売促進に携わる方に向けて、これだけは知っておきたい!押さえておきたい!マーケティング用語を集めました。
基礎から応用まで、多岐にわたる用語を活用例なども含めてご紹介いたします。ぜひご活用ください。

用語解説【5F(ファイブフォース)分析】

5F分析(Five forces analysis)とは、アメリカの経済学者であるマイケル・ポーターが提唱する業界分析手法のひとつで、業界の構造を把握するためのフレームワークです。
5つの力(要素)とは、「既存競争者同士の敵対関係」、「新規参入の脅威」、「代替品の脅威」、「売り手の交渉力」、「買い手の交渉力」を指しています。この5つの要素を一つ一つ把握し、力関係が弱ければその業界の収益性は高く、強ければ収益性は低いということになります。

解説

5F分析を行うべき一番の理由は、自社が属する、もしくはこれから参入を検討している業界の現在の状況を明らかにするためです。 業界を明確に定義し、力関係で収益を上げられる箇所はどこなのかを知ることで、自社が生き残っていくために必要なこと、対処法、そして場合によっては参入自体を控えるべきかどうかといったことも見えてきます。

一般的にマーケティングを行う際のプロセスは、事実関係を抽出し、戦略の方向付けをする「環境分析」。
戦略市場の明確化、ターゲット選定などを行う「戦略立案」。
そしてそれらの情報を元に、具体的な打ち手の立案を行う「施策立案」の大きく3つに分けられます。

5F分析はこのなかの最初の段階である「環境分析」に位置します。

5F分析のフレームワーク図

5F分析の重要性

企業が成長し生き残っていくためには、既存の事業を拡張させるか、新たな事業に参入するかの大きく二択になります。
この際、どちらを選択するにしても、自社に優位性があるかどうかは、競合要因となる外部環境を知らなくてはなりません。5F分析はその外部環境を把握するのにもっとも適した手法のひとつです。

5F分析を行うことのメリットは、将来的に自社にどういった脅威が降りかかってくるのかを予測できるようになることです。将来的な脅威の予測ができれば、ただ漠然とした不安を抱えているのではなく、具体的な脅威に対する効果的な対策も立てやすくなります。

また逆に業界全体でどの程度の収益を上げられるのか、そしてそのなかで自社はどれだけの収益が得られるのかも見えてきます。これによって自社の事業の見直し、もしくは参入するかどうかの判断ができるようになることも、5F分析のメリットといえるでしょう。

環境分析、戦略立案、施策立案の構成図

5F分析を使うコツと注意点

5F分析は基本的にそれぞれ要素の評価は、ある特定の業界についてのみ調べて評価をするため、客観的な評価が難しく主観的になりがちです。
例えば5つの要素のなかのひとつである「新規参入の脅威」。これは新規参入のハードルが低ければ低いほど、競争相手が増えることになり、収益性が下がるというものですが、そのハードルをどこに設定するかによって評価は大きく異なります。

仮に1年間で新規参入した企業の数で評価するとして、10社で多いと判断する人もいれば、20社でも少ないと判断する人もいる。つまり分析をする人によって、結果が変わってきてしまうのです。そのため最終的には主観的な判断をするとしても、できる限り多くの客観的なデータを集めなくては、正確な判断ができなくなってしまう恐れがあります。

もうひとつの注意点は、分析単位(=業界の定義)の設定によって分析結果が変わってしまうという点です。1年間のスパンで見るのか、半年のスパンで見るのか。IT業界の分析をする場合、情報機器やソフトウェアの販売をする企業だけを対象にするのか、サーバの構築、システム設計を行う企業も含めるのか。これらを明確にしないと、まったく見当違いな分析結果が出てしまうかもしれません。

客観的なデータの収集、分析単位設定の明確化。この2点は5F分析を行ううえで、十分に注意しなければならない点だといえるでしょう。

大手ファミリーレストランの5F分析

それでは実際に5F分析を行ってみましょう。ここではファミリーレストラン大手(A社)の例を見ていきます。

A社は、1971年に福岡県北九州市に第一号店を出店。「料理もお店づくりも“質”を大切にし、親しい人をお招きするような真心のこもったおもてなしで、地域に愛されるレストラン」をテーマに店舗数を増やし続け、現在の店舗数は、約200店舗です。

大手ファミリーレストラン(A社)の5F分析図

業界内の脅威

デニーズ、すかいらーく、ココス、サイゼリヤなどの一般的なファミリーレストランのほか、バイキング系、しゃぶしゃぶ系、和風系などさまざまなタイプのファミリーレストランが業界内の脅威となります。

安さを第一に求める層に対して、サイゼリヤ、ガストが大きな脅威となり、取込みは簡単ではありません。しかしA社は早い段階で深夜営業を制限したり禁煙・分煙店舗の導入、 メニュー改革による質向上に取り組んでいました。そのためファミリー層や女性客などから評価を得て、ほかのファミリーレストランよりも優位に立っています。

売り手の脅威

A社は、ほかのファミリーレストランに比べ、食材へのこだわりが人一倍高く、厳選された素材を使ったメニューが中心となっています。そのため、災害による食材の高騰・国際施策による影響を 受けやすいといった点に弱さがあります。

新規参入の脅威

ファミリーレストランの売上はすでに大手の何社かで占められていて、これからグループ単位で新規参入していくことは非常に困難です。そのため新規参入の脅威は強くありません。

買い手の脅威

買い手(顧客)の多くはA社に対し、料理やホスピタリティといった品質の高さを求めていて、ほかのファミリーレストランとの住み分けが生まれています。そのため買い手の脅威はそれほど強くはありません。 ただし買い手の要求に応え続けていくには、常に高い品質を維持していくためのコストがかかる点については、注意が必要です。

代替品の脅威

外食のほか、コンビニ、スーパー、デリバリーといった中食。レシピサイトやミールキットといった内食などがありますが、現在、飲食市場全体が中食化しつつあることから「代替品の脅威」は ほかの4つの脅威のなかでももっとも大きな脅威となっています。

結論

5F分析の結果、大きな課題として挙げられるのは「代替品の脅威」の項目です。外食習慣が希薄になりつつある点も踏まえると、コンビニなどの手軽さ・クオリティは脅威に感じます。しかし、A社の強みは「クオリティ」にあるため、中食に対抗するためにデリバリーなどを導入するとクオリティに影響を与えかねません。
「手軽さ」をカバーすべきか、「質」で差別化を図るべきかで議論が必要になるでしょう。

まとめ

5F分析は、自社が属する業界、もしくはこれから参入の検討をしている業界での外的環境を把握し、収益を上げることができるのか、また上げるためには自社の何を強化すべきかといったことを知るうえで非常に重要な分析手法です。
さらに「環境分析」、「戦略立案」、「施策立案」といったマーケティングの流れのなかでも、「環境分析」というマーケティングの土台となる部分を担っているため、5F分析をしっかりできるかどうかは、その先の戦略立案、施策立案をよりよいものにするうえでも、欠かすことのできないものであるといえるでしょう。

ただし注意点として、5F分析はあくまでも分析であるため、それ一つですべての答えが出るわけではないこと。またできる限り多くの客観的データを収集しないと、正確な判断は行えないこと。そして以前に比べ一つの業界に多くの異業種が参入するようになった今、業界の明確化も難しくなっていることが挙げられます。これらのことを十分理解したうえで、行うことが重要です。

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