売るためのヒントは顧客の声にあり

マーケティングって、結局どんなことなんだろう。専門的な知識や理論でありながらも、実は私たちの身近にあって、仕事やプライベートを魅力的に改善してくれるものなんです。今日から使えるマーケティングの知識や使い方を、がんばり屋の女の子、神山さんと一緒に学んでいきましょう!
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前回、5F分析を通じて、業界内の脅威や力関係を整理した神山さん。どのF(力)に注目すべきかは少し見えてきた気もしますが、まだまだ自信がない様子。渡辺部長のアイデアで、社内にアンケート調査を行って、だいふくにゃんこユーザーの声を直接聞くことにしました。そこから聞こえてきた生の声は、神山さん達のマーケティングにどう影響していくのでしょうか?
主要キャラクター紹介
アンケート調査で真のベネフィットを探せ!

うぅーん……。く、苦しい……

神山さん、どうしたんだ!?

……はっ! 部長! ここは? どこですか??

何を言っているんだ、オフィスだよ。お昼から帰ってきたら、すごい顔でうなされているからビックリしたよ。それにしても、なぜ課長の座布団を抱いて寝ているんだ?

はっ! これは課長が20年愛用している座布団! なぜ!?

だいふくにゃんこが机の下に落ちているぞ。隣の席に置いてあった課長の座布団を、間違って抱いて寝てしまったんだな?

どうりで悪夢を……

そうか……。やはり枕は大事だな……。そうだ! アンケートはどうなった?

あ、はい! 女子社員にあてて、『【至急回答をお願いします!】だいふくにゃんこユーザーの方へ』というアンケートメールを送っておきました。お昼休み中に回答をくださいと書いておいたので、もう集まってくると思います

うむ。社内のユーザーを対象にした、手の届く範囲での堅実な調査だね。まさに半径5メートルのマーケティングと言えるだろう。どのような質問内容でアンケートを出したのかな?

はい。だいふくにゃんこについて私がずっと悩んでいることを中心に訊いてみました
【アンケート内容】
1.年齢
2.入社年数
3.3980円という販売予定価格をどう思いますか?(高いか、安いか、ちょうどよいか)
4.どこで販売するのが最適だと思いますか?
5.だいふくにゃんこを購入した目的は?
6.満足度(5段階:5が最高)
7.感想(自由記述:良い点、悪い点など)
8.だいふくにゃんこが売れるために必要なことは何でしょう?(自由記述)

いいね。アンケートの項目は少なすぎず多すぎず、知りたい内容をきちんと集計できることが大切だ

集まった回答は45件ほどでした。さっそく集計してみますね
1.年齢 平均27歳
2.入社年数5年付近が一番多く、10年以上は少ない
3.3980円という販売価格はどう思うか?ちょうど良いが最多。高すぎるという不満はなかった。
4.どこで販売するのが適切か?玩具店、デパートの雑貨売り場、ネット販売
5.だいふくにゃんこを購入した目的は?会社での昼寝に使う 60%
家でテレビを観ながら抱きつく 35%
就寝時に抱き枕として 5%
6.満足度(5段階:5が最高) 1:0% 2:0% 3:10% 4:80% 5:10%
7.感想(自由記述:良い点、悪い点)
<良い点>
・かわいくて、見ているだけで癒される
・柔らかくてぷにゅっとした肌触りがストレス解消になる
・会社での昼寝に枕としてピッタリ
・もっちりとしていて顔をうずめられるので寝顔を見られない
・枕として使うと顔に手の跡がつかない
・サラッとした布地なので、べたつかずお化粧が崩れない
<悪い点>
・少し大きめなので持ち帰るのに不便だった(電車内でジャマ)
・色のバリエーションが欲しい
・ミケタマちゃんとの違いがわからない
8.だいふくにゃんこが売れるために必要なことは?(自由記述)
・もっと宣伝してお客さまに知ってもらうべき
・肌触りを実際に体験してもらう
・世界観やストーリー、キャラクター設定などをお客さまに伝える

年齢的には神山さん(24歳)より少し上の世代が中心になっているようだね

はい。仕事も多く任されるようになってきて、上と下に挟まれてストレスを抱えている先輩が多いように思います。それに、驚いたのは、会社で枕として使っている人の多さです! 半分以上だとは思いませんでした

そうだね。商品企画室以外の女子社員も昼寝用に使っているということだ。それに宣伝が不足していることや、差別化が足りない点も明らかになった。満足度は高いのだから、これは単なるぬいぐるみとしてではなく、ミケタマちゃんとは別のポジションで戦うべきかもしれないね

ユーザーの声を聞かないとわからないことも多いのですね。でも、別のポジション……というと?

もう少し分析をする必要があるかもしれないが、IT業界では午後の生産性向上のために、積極的に昼寝を導入する企業が増えていると聞いたことがある。それに、厚生労働省も、30分以内の短い昼寝でリフレッシュして、午後の眠気をやりすごすことを推奨しているんだ。神山さん、ここから何かひらめかないかい? 君たちはだいふくにゃんこをどう使っている?

そっか、枕! 昼寝にチャンスがありそうですね!

その調子だ。このアンケートからわかった事実をもとに、業界を再定義して、もう一度5F分析をやり直してごらん

はい! 例えば……業界は「癒し系ぬいぐるみ業界」から「快眠ぬいぐるみ業界」なんて感じでしょうか!? 分析図も書いてみますね!
にゃんこが戦うのはここだ! 脅威に勝つために業界を再定義

前回の「癒し系ぬいぐるみ業界」での5F分析から……
【5F分析はこう変わった!】
(1)売り手の交渉力
サンライズカンパニーの場合は「生産工場」が売り手となる。大量に発注できないので原価を抑えることができない。ただし、ぬいぐるみを生産してくれる工場はほかにもありそうなので、交渉力は強くもなく、弱くもなく、といったところ。これは旧5F分析と変わらず。
(2)買い手の交渉力
メーカーであるサンライズカンパニーの買い手は、顧客に製品を直接売ってくれる「小売り」。玩具・ぬいぐるみカテゴリであればミケタマちゃんのような売れ筋商品には勝てないが、カテゴリが変われば買い手も変わる。同じカテゴリに圧倒的な競合商品がなければ、買い手の圧力も弱まる。
(3)業界内競争
癒し系ぬいぐるみ業界であればピュアランド社がシェアトップだが、快眠ぬいぐるみ業界と考えれば現在は競合が見当たらず、先行しているので優位に。
(4)新規参入の脅威
今までにない業界なので、チャンスがあるとみれば他社もどんどん参入してくる。製作に特別な技術も必要ない。
(5)代替品の脅威
お昼寝グッズとして考えると、アイマスクや従来からある小型の抱き枕など、代替品は多い。

部長! このような整理でいかがでしょうか?

うん。慣れてきたね。では前回同様、どのF(力)に注目すべきかを考えて欲しい

代替品の脅威と新規参入の脅威だと思います。新規参入の脅威は大きくなっていますから、早くシェアを抑えてしまうのが良いのでは? 代替品の脅威も相変わらずありますが、業界内競争に対策することで解決できるのではないかと思います

なるほど。ではKBFとKSFはどう変わる?

えぇ!? KBFとKSFも変わるんですか?(またすっかり忘れてた!)

そりゃそうだよ。それに僕は、前回のKBFとKSFには納得していない

(意外と意地悪なんだー!)えぇっとー このような感じではいかがでしょうか?
【前回のKBFとKSF】
KBF → ミケタマちゃんより安い価格
KSF → コンビニで仕事の帰りにすぐ買える
【今回のKBFとKSF】
KBF → 代替品と比べて割高感を感じない価格ストレスや疲れを、場所を選ばずすぐに癒してくれるぬいぐるみ(枕)
KSF → 話題性があって、いつでもどこでも手に入る

うむ。神山さん、頑張ったね。ここまできたら、見えてきた新しい機会や脅威をSWOT分析で整理し、自社(製品、サービス)の「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つを確認して、成長するための戦略を練ろう

ここまでやって、ようやくSWOT分析なんですね! でもお昼寝したら、SWOTのこと忘れちゃったような……(泣)

大丈夫。ちゃんと振り返りながらやっていくからね。今までは弱みや脅威ばかりが目立っていたが、今度は勝てるチャンスと課題が明確になってくる。ここから逆転だよ!
まとめ
神山さんはアンケート調査の結果から、業界分析(5F分析)を再定義して対策すべきコトを確信したようです。次回は、今まで分析した結果をもとにSWOT分析に進みます。弱みや脅威の分析ばかりで落ち込んでいた神山さんも、ようやく攻めの戦略を練る段階に進めるのでしょうか? 第6回もお楽しみに!
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