業界を取り巻く5つの力!?5F分析を実践しよう

From: ダイレクトマーケティングラボ

2018年08月27日 00:00

この記事に書いてあること

マーケティングって、結局どんなことなんだろう。専門的な知識や理論でありながらも、実は私たちの身近にあって、仕事やプライベートを魅力的に改善してくれるものなんです。今日から使えるマーケティングの知識や使い方を、がんばり屋の女の子、神山さんと一緒に学んでいきましょう!

前回、3C分析を通じて自分たちをとりまく環境を再確認した神山さん。Customer(顧客)、Competitor(競合)とCompany(自社)を分析したところ、自社の弱さばかりが目立つ結果に。落ち込む神山さんに、渡辺部長は「競合をもっと分析すれば、自分たちの強みが見えてくる」と言って励まします。今回は脅威をもっと把握するために、業界に影響を与える5つの競争要因を分析して業界環境を掘り下げていきます。

主要キャラクター紹介

神山さとみ

24歳、独身(彼氏ナシ)。サンライズカンパニー第三事業本部商品企画室所属。美大のデザイン科を卒業後、新卒で入社。家電事業の営業アシスタントを1年経験した後、かねてからの希望だった商品企画室に異動。キャラクターグッズ「だいふくにゃんこ」を開発する。

渡辺部長

46歳。妻と2人の子供がいる。サンライズカンパニー営業・戦略グループマーケティング部部長。長らく大手商社に勤め、MBAも取得済み。サンライズカンパニーの社長に請われ、半年前より転職して現職に就いた。

だいふくにゃんこ

神山さんが企画したぬいぐるみ。素材はビーズで、ぷにゅっとした触感が魅力。その何も考えてなさそうな表情が女子社員のハートをとらえ、社内限定で人気上昇中。

敵を知り己を知れば百戦殆う(あやう)からず―業界の脅威を知る驚異の5F分析

部長:

3C分析ではCustomer(顧客)がアラサー女子、Competitor(競合)はピュアランド社のミケタマちゃん、Company(自社)は私たちの弱みが目立って、販路がないこと、原価が高めなところが明確になったね。なんだか元気が出ない分析結果だったが、もう少し私たちを脅かす業界の脅威について分析を進めていこう

神山:

えー! もっと落ち込んでしまいそうです……

部長:

はは。気持ちはわかるけど、考えてごらん。例えば、健康診断で問題が見つかったら、必ず病院に行って精密検査をするだろう? 問題には正面から向きあって、手遅れにならないように解決策を考えることが大事なんだ。だから今日は少し長くなるが、自分たちを取り巻く環境全体、つまり業界環境を丁寧に分析していこう

神山:

業界の……環境ですか?

部長:

そう。私たちが相手にするのは、競合やお客様だけではないよね? 仕入れ先や、同じ業界に新たに参入してくる企業のことも考えなくてはいけない。これらをまるっと考えることを5F分析と言うんだ

マーケティング戦略の流れ

5F分析とは

5F(5forces)分析とは、自社が属する業界の「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「業界内競争」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」という5つの競争要因を把握するための分析手法。それぞれの要因の力(フォース)関係を分析することで、業界全体の構造・特徴や収益性をあきらかにする。力の大きさは「強・弱」で表し、力が強いところから利益が流出していると判断し、打つべき対策や市場参入の判断に活用する。

4回のまとめ

(1)売り手の交渉力

自社に物やサービスを供給してくる側の「力」。これが強いと仕入れコストが高くなると考える。

(2)買い手の交渉力

自社から物やサービスを買う側の「力」。これが強ければ値引きなどが必要となり、利益率が低くなる。

(3)業界内競争

自社が属する業界内での力関係。競争が激しければ、価格競争となり収益が減る可能性がある。

(4)新規参入の脅威

新規参入は既存の企業からシェアを奪う。新規参入者が強ければ価格競争に陥る可能性がある。

(5)代替品の脅威

自社の製品にとって変わるような製品があれば、脅威となる。

部長:

5F分析の「業界内競争」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」は、3C分析の「Competitor(競合)」を細分化したものだから特に重要だよ。神山さん、今までの話を元に、だいふくにゃんこの5F分析をしてくれないかな?

神山:

は、はい! まず新規参入は……

部長:

待った! 落ち着いて。まずは私たちの業界を定義しよう。私たちやピュアランド社がいる業界は?

神山:

はい。ぬいぐるみ業界ですよね?

部長:

もう少し詳しく言うなら「癒し系ぬいぐるみ業界」かな。ピュアランド社は子どもからお年寄りまで、私たちはこれからアラサー女子をターゲットにしたいと考えている。その業界の中で5Fを整理すると、どうなる? 私たちはメーカーだから、それを意識して整理してごらん。

神山:

わかりました! やってみます……!

業界はこうなっていた! にゃんこを取り巻く5つの力

5F分析のフレームワークの図

(1)売り手の交渉力

サンライズカンパニーの場合は「生産工場」が売り手となる。大量に発注できないので原価を抑えることができない。ただし、ぬいぐるみを生産してくれる工場はほかにもありそうなので、交渉力は強くもなく、弱くもなく、といったところ。

(2)買い手の交渉力

メーカーであるサンライズカンパニーの買い手は、顧客に製品を直接売ってくれる「小売り」。小売業者はミケタマちゃんのような売れ筋商品を仕入れたいので、認知度の無い商品は卸売価格を安くしないと買ってくれない。

(3)業界内競争

ピュアランド社がシェアトップで、ますます寡占化が進んでいる。

(4)新規参入の脅威

ピュアランド社が強すぎるので、新規参入はあまりないと思われる。サンライズカンパニーの参入は難しいかもしれない。

(5)代替品の脅威

アラサー女子を癒す代替品としては、アロマグッズやお風呂グッズが売れている。魅力のある製品も多く、脅威としては強い。

神山:

部長!こんな感じでしょうか?

部長:

うん。よく整理できてる。ここで大事なのは、どのF(力)に注目すべきか、脅威として考えられるか判断して、関連性を把握することだよ

神山:

どのFが重要か……

部長:

そう。一般的には大きな力が働いているところから利益が失われると判断する。そこに対策を考える必要があるのはわかるね? 利益のない事業は継続できないのだから

神山:

5F分析の結果から考えると……私は買い手の交渉力かな? と思います

部長:

なるほど。なぜそう思うんだい?

神山:

代替品の脅威もあるかもしれませんが、今は何よりミケタマちゃんが強すぎてお店がだいふくにゃんこを置いてくれない状況です。このFに対策をしないと、ほかのFも解決できない気がします

部長:

その通りだね。僕もそう思う。では考えられる解決策は?

神山:

買い手にも代替品にも負けない対策……やはり他社製品との差別化ですよね?

部長:

そうだね。お客様に、ほかの製品では得られない価値を提供する。差別化はもっとも大事な対策だ。さぁ、これでやっと3C分析のときに保留しておいたKBFとKSFが見えてこないかい?

神山:

ええっ! KBFとKSF?(完全に忘れてた!)

部長:

KBFは「お客様がその商品を買う理由」、そしてKSFは成功のカギ、つまり「市場のなかで勝つための必須条件」ということだったね

神山:

なるほど! 業界全体を把握したからこそ、その両方が見えてくるんですね!

部長:

そのとおり。では神山さん、間違っていても良いから今の分析結果からKBF、KSFを導いてごらん

神山:

はい!(自信満々に) 今までは玩具店の店舗にアプローチしてましたが、なかなか置いてもらえないので、売り場を変えてコンビニでの販売を考えてみてはどうでしょう? コンビニなら残業で遅くなっても寄ることができるし、やっぱり安くてすぐ買えるのが一番!

KBF → ミケタマちゃんより安い価格

KSF → コンビニで仕事の帰りにすぐ買える

部長:

うーん……そうきたか

神山:

え? あってます……よね?

部長:

うーん、もう少し考えてみるべきかなぁ。もちろん価格は重要な購買理由だけど、安いだけでお客様は商品を選ぶだろうか? それにぬいぐるみを売っているコンビニって、見たことあるかい?

神山:

(間違っていても良いって言ったのに!)はぁ……せっかく時間をかけてやってきた分析をムダにしてしまったでしょうか。もう少し考えてみます

部長:

テンポ良く進めすぎたかな? 休憩も入れなかったし、もうお昼だね。少し休んでから分析を再開しよう。気分が変われば、良いアイディアも浮かんでくると思うよ

神山:

はい! そうします! ランチのあと、だいふくにゃんこを抱いて昼寝をすると、すごく頭がスッキリするんです。午後もよろしくお願いします!

部長:

ん? だいふくにゃんこを枕にして寝てるの?

神山:

はい。あのぷにゅっとしたやわらかさと、肌触りがすごく気持ち良いんです。商品企画室の女子は、みんな愛用してますよ

部長:

ほー、ウチの部の女子社員も持ってるけど、彼女たちも同じかな?

神山:

うーん、どうでしょう……。ほかの部の人には聞いたことがないですね

部長:

神山さん、一度、社内の女子にアンケート調査をしてみないかい?

神山:

アンケート? ですか?

部長:

今までユーザーに、アンケート調査をしたことはないだろう? 使用感や値頃感、要望と、アンケート調査ではさまざまな問題点や指標を知ることができる。それに社内ならすぐに実施できるし、回収率は100%に近いだろう

神山:

あー! たしかに! こんな近くにユーザーがいたのに、まったく気がまわりませんでした! じゃあさっそく、アンケート用紙の準備を……!

部長:

いや……だからお昼だってば……

神山 :

そうでしたー。でも、なんだかすごくやる気が出てきました!

部長 :

ははは。その調子でさっそく午後にアンケート調査を進めよう!

まとめ

神山さんは環境分析(3C分析)に続いて、渡辺部長と業界分析(5F分析)をまとめました。

KBFとKSFはもう少し分析が必要なようですが、渡辺部長は神山さんの一言から何やらヒントをつかんだ様子。次回は、アンケート調査の結果から新しい事実が見えてきて、さらに分析が進みます。第5回もお楽しみに!

「癒し系ぬいぐるみ業界」におけるだいふくにゃんこの5F分析の図

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