3つの視点で市場を見える化!3C分析を活用しよう

From: ダイレクトマーケティングラボ

2018年07月12日 00:00

この記事に書いてあること

マーケティングって、結局どんなことなんだろう。専門的な知識や理論でありながらも、実は私たちの身近にあって、仕事やプライベートを魅力的に改善してくれるものなんです。今日から使えるマーケティングの知識や使い方を、がんばり屋の女の子、神山さんと一緒に学んでいきましょう!

前回、マーケティングの流れを一通り学んだ神山さん。部長のアドバイスで、自ら企画したキャラクターグッズ「だいふくにゃんこ」を取り巻く状況を整理するため、環境分析から始めることになりました。

環境分析では「SWOT分析」が基本、と部長から教わりましたが、実はほかにも分析すべきものはいろいろあるんです。今回は、環境分析をもっと掘り下げて見ていきます。

主要キャラクター紹介

神山さとみ

24歳、独身(彼氏ナシ)。サンライズカンパニー第三事業本部商品企画室所属。美大のデザイン科を卒業後、新卒で入社。家電事業の営業アシスタントを1年経験した後、かねてからの希望だった商品企画室に異動。キャラクターグッズ「だいふくにゃんこ」を開発する。

渡辺部長

46歳。妻と2人の子供がいる。サンライズカンパニー営業・戦略グループマーケティング部部長。長らく大手商社に勤め、MBAも取得済み。サンライズカンパニーの社長に請われ、半年前より転職して現職に就いた。

だいふくにゃんこ

神山さんが企画したぬいぐるみ。素材はビーズで、ぷにゅっとした触感が魅力。その何も考えてなさそうな表情が女子社員のハートをとらえ、社内限定で人気上昇中。

SWOT分析の前に、3つのCでもう少し『環境』の整理をしよう

神山:

渡辺部長、環境分析の基本のSWOT分析って、商品の強みとか弱みとか……要因を4つくらい分析することで成長戦略を練る手法……でしたっけ?

部長:

そう。自社(製品、サービス)の「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要因を探って明確にし、戦略立案を立てることがSWOT分析だ。神山さん、よく覚えていたね

神山:

(褒められちゃった♡)それでは戦略を練るべく、さっそくホワイトボードに弱みから……

部長:

神山さん、ちょっと待って。何も弱みから書かなくても……(笑)。それに、SWOT分析以外にも、環境分析には手法がいくつかあるんだよ。成長戦略を練るには、まず市場の中で勝ち残らなければならないからね。その手法のひとつとして、まず3C分析を行って、KBFとKSFのヒントを考えてみよう

神山:

3C? KBF? KSF? アルファベットばかりでさっぱりわかりません

部長:

それは無理もないよ。あせらないで1つずつ、順番に確認していこう。KBFは、「お客さまがその商品を買う理由」のこと。そしてKSFは成功のカギ、つまり「市場のなかで勝つための必須条件」ということだよ

KBF・KSFとは

KBFとはKey Buying Factorの略で「重要購買決定要因」と訳される。顧客ニーズのなかでも、特に決定的な購買の理由となるもので、顧客によって違う場合がある。例えば、同じ商品でも、ある人にとっては価格がKBF、別の人にとってはすぐ近くで買えることがKBFになる。
KSFはKey Success Factorの略で「重要成功要因」や「成功のカギ」と訳される。KBFが顧客視点であったのに対し、KSFは業界のなかで事業を成功させるための必須条件であることから、企業視点であると言える。

神山:

うーん、わかったようなわからないような

部長:

じゃあもう少し例をあげよう。そもそもKBFは顧客視点で考えないといけないよね? 例えば、「業界最安値」とか「取扱店舗が多く、いつでも試して買える」みたいに、お客さまが欲しいと思ったときの決め手になる条件がKBFだ

神山:

じゃあ「注文して即日で届く」なんてこともKBFですか?

部長:

そうだね。次にKSFだけど、これは絶対的なものではく、時代や環境の変化に応じてドンドン変化していくものだ。良い例がコンビニかな? 昔は夜遅くまで営業していることやお酒を24時間扱えることが小売業界でのKSFだったけれど、今はスーパーもそこそこ遅くまでやっているし、規制緩和でお酒を扱うことが自由化されたね。かわりに、最近ではプライベートブランド商品の開発やオムニチャネル化(※)、海外進出などがKSFになっている。異業種との連携も盛り上がっていて、コインランドリーやドラッグストアと組んだり、なかにはフィットネスクラブ併設型の店舗を作ったりしているところもあるね。ここ5年ほどは、ぬいぐるみ業界ではピュアランド社が一定のKSFを獲得して優位に立っているかもしれないが、今後もそうだとは限らない。だから私たちが未来のKSFを先取りして、立場を一気に逆転させることだって可能だ※オムニチャネル…実店舗やネット通販といった販売チャネルを統合させ、ユーザーにアプローチする戦略

神山:

そうか!未来のKSFを先取りすることが「成功のカギ」になるんですね! そのためにまずは環境の分析なんですね!

部長:

そういうことだね。言葉の意味が理解できたら、次に3Cを考えてみよう

神山 :

え? やっとわかってきたのにもう次ですか……(トホホ)

部長:

大丈夫。KBS、KSFは3Cと密接に関係しているから、流れを追っていけば理解しやすいと思うよ。とはいっても、KBFやKSFは、3C分析だけで明らかになるわけじゃない。いくつかの分析を経て、最終的にクリアになるものなんだ。今は言葉の意味だけ、覚えておこう

3C分析とは

3CのCはCustomer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)それぞれの頭文字のこと。Customerでは顧客と市場の分析(ターゲット顧客やニーズの把握など)を、Competitorでは競合他社の状況、強み、弱みなどを分析する。Company では自社の強み、弱みを他社と比較してリストアップし、課題整理も行う。

マーケティング用語集「3C分析の具体例と使い方」へ

神山:

あれ? 強み? 弱み? 3C分析ってSWOT分析とどう違うんですか?

部長:

とても良い質問だね。イメージとしては3C分析で詳細に分類した問題や自社の課題を、SWOTに集約していくと考えれば良いよ。実はまだこれからいくつか別の分析が必要になるんだけど、まずはそれぞれの分析で事実関係の抽出をして、最終的にSWOTで戦略の方向づけをしていくんだ

神山:

えーー! まだまだ先は長いんですね。でも以前のごちゃっとした頭の中が、段階を追って少しずつ整理されていくような気がします

部長:

そう。大事なのは一気に結論に向かおうとしないで、1つずつ整理して結果を積み上げていくことなんだ

マーケティング戦略の流れ

実践! だいふくにゃんこの3Cを見ていこう

部長:

じゃあ、どんどん整理を進めて、まずCustomer(顧客)から考えてみよう。顧客は誰で、そのニーズは何だろう? そして市場の環境は?

神山:

えーと、まず、だいふくにゃんこの顧客として考えられるのは、“アラサー女子”かなあ。ぬいぐるみというとすぐに子どもをターゲットに考えがちですけど、ぬいぐるみ市場の環境では少子化で子どもが減っています。それに、だいふくにゃんこの持ち味である癒やしキャラのイメージは、子どもよりも大人に響きそうです。仕事で疲れて家に帰ったら、まずは「ただいまっ」って抱きつくみたいな。実際、社内の女子社員にも人気があります。同年代のお友達に誕生日プレゼントで贈ったら、すごく喜ばれたなんて話も聞きました

部長:

良い視点だね。つまりぬいぐるみ市場は、少子化の影響で顧客の割合が変化し始めているんだね。そしてこれから台頭してくるのが、アラサー女子になるのかな? そのニーズに目をつけた競合も多く参入してきそうではあるね。 現在のCompetitor(競合)はどこ?

神山:

競合はなんといってもピュアランド社です。ミケタマちゃん、すごい流行ってますよね。値段がリーズナブルで、誰でも買いやすいことも影響してると思うんですが、おばあちゃん世代からそのお孫さん世代まで、幅広く愛されてる感じです。人件費の安い海外に生産工場を持っていて、原価を安くできると聞いたことがあります

部長:

確かに、ピュアランド社はダントツ1位だね。じゃあ最後に、私たちのサンライズカンパニーはどうだろう? Company(自社)の強みと弱みをリストアップしてみよう

神山:

はい、今回キャラクターグッズを取り扱うのが初めてだったせいか、店舗に置いてもらうことすらできていない状況です。前にもお話しましたけど、だいふくにゃんこの強みを整理できていないことが原因だと反省しています。もっとたくさんの方に知ってもらうにはいろいろな店舗に置きたいのですが……

部長:

販路を確立しなければいけないという課題だね。ほかには?

神山:

生産も問題です。ますます在庫が増えちゃうので、一回に発注する量を少なくするしかありません。そうなるとどうしても原価が高くなってしまうんです。それに、だいふくにゃんこは日本に工場があるので、高い人件費なども原価に影響していると思います。なんだか競合他社に比べて弱みばかりですね……。分析をすればするほど、ピュアランド社に対抗する手立てがない気がします(泣)

部長:

そんなことはないよ。現状がハッキリわかっただけでも収穫だ。まだ少ないけど、Customerのニーズ、Competitorの強み、Companyの弱みと課題が、こんな短時間に整理できたじゃないか。大切なのは競合他社との差別化。販路や生産面じゃないところにも差別化ポイントはあるだろうし、何よりだいふくにゃんこじゃないと叶えられない顧客のニーズがきっとあるはずだよ。それが私たちの強みというわけだ

神山:

だいふくにゃんこじゃないとダメな理由かぁ……

部長:

神山さんはまだマーケティングを始めたばかりじゃないか。まずは市場環境を見える化できて良かったと思う。ただ、3C分析は奥が深い。神山さんはアラサー女子が顧客と言ったけど、アラサー女子のニーズを深堀りすれば、もっとわかることがきっとある。もしかしたら、本当の顧客はアラサー女子じゃないかもしれない。そうなるとKBF自体が変わることもあり得るよね?

神山:

ふぅー。先は長いなぁ……。私にできますかね?

部長:

私も一緒に考えるから大丈夫。あせらず冷静に分析を続けよう

神山:

は、はい。これからもよろしくお願いします!

まとめ

こうして、神山さんは渡辺部長のアドバイスをもとに環境分析を始めました。

しかし、業界1位のピュアランド社の強みに対し、自社の強みがなかなか見つからず差別化が図れない神山さん。次回は、だいふくにゃんこを取り巻く5つの脅威を知り、そのための分析と対策について渡辺部長に教わります。第4回もお楽しみに!

3回のまとめ

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