君が売るのは「モノ」じゃない
2018年04月19日 00:00
この記事に書いてあること
マーケティングって、結局どんなことなんだろう。専門的な知識や理論でありながらも、実は私たちの身近にあって、仕事やプライベートを魅力的に改善してくれるものなんです。今日から使えるマーケティングの知識や使い方を、がんばり屋の女の子、神山さんと一緒に学んでいきましょう!
日用品から家電まで、さまざまな商品を製造し、販売するメーカー「サンライズカンパニー」。商品企画室で働く女子社員の神山さとみは、若い女性目線からキャラクターグッズの「だいふくにゃんこ」を企画。これまで、同社ではあつかったことのない「ぬいぐるみ」というジャンルでしたが、チャレンジ精神を良しとする社長の目に留まり、製品化が決まりました。
発案者の神山さんは、商品デザインに製造の発注、商品のできばえのチェックと、目の前の業務に追われ、あわただしく日々が過ぎていきました。そして、気が付いた時には、倉庫に大量の「だいふくにゃんこ」が……。初めてのジャンルで誰も勝手が分からない中、数字だけが独り歩きしてしまったのです!
神山「これ……誰がどうやって売るんだろう……。うう、不安になってきたなぁ……」
社長「なにを言ってるんだ。発案者のキミに決まってるじゃないか」
神山「――えっ! わたしですか!!!!!!」
社長「大丈夫、大丈夫! 頼もしい助っ人を付けるから! じゃ、あとはよろしく!」
かくして、「だいふくにゃんこ」を売るための、神山さんの「マーケティング道」が始まったのでした……。
主要キャラクター紹介
神山さとみ
24歳、独身(彼氏ナシ)。サンライズカンパニー第三事業本部商品企画室所属。美大のデザイン科を卒業後、新卒で入社。家電事業の営業アシスタントを1年経験した後、かねてからの希望だった商品企画室に異動。キャラクターグッズ「だいふくにゃんこ」を開発する。
渡辺部長
46歳。妻と2人の子供がいる。サンライズカンパニー営業・戦略グループマーケティング部部長。長らく大手商社に勤め、MBAも取得済み。サンライズカンパニーの社長に請われ、半年前より転職して現職に就いた。
だいふくにゃんこ
神山さんが企画したぬいぐるみ。素材はビーズで、ぷにゅっとした触感が魅力。その何も考えてなさそうな表情が女子社員のハートをとらえ、社内限定で人気急上昇中。
神山:
いきなり販売担当に命じられるなんて、どうしよう……。こんなにたくさんのぬいぐるみ、どうやって売ればいいのかわからないよ……!
部長:
なるほど、これが社長のおっしゃっていた『ミッション』か。なかなか壮観だね
神山:
あなたは?
部長:
初めまして。部長の渡辺です。マーケティングを専門としている。神山さんに力を貸しにきたんだ
神山:
し、失礼しました! わたしは神山さとみです。この『だいふくにゃんこ』の企画と製造を担当しました!
部長:
うん、知ってるよ。ウチの部の女子社員にも大変な人気だからね。それにしても、この量は……
神山:
ええ、作り過ぎた気がしています。もう、どうしていいかわからなくて……
部長:
混乱しているようだね。まずは問題を整理しよう。神山さんはこのぬいぐるみの山、つまり在庫をどうしたいと考えているんだい?
神山:
せっかく作ったんだから、みんなの手に届けたいです! でも、こんなにたくさんあると、売る方法がわからなくて……。渡辺部長は、マーケティングの専門家ってうかがっています。どうすればいいか、わたしに教えていただけませんか?
部長:
もちろん。そのために私は来たんだよ。だから、そんな泣きそうな顔をするのはやめなさい
神山:
は、はいっ! それで何かいい方法は……
部長:
その前に質問だ。そもそもマーケティングとは、いったいなんだと思う?
神山:
……急に言われても、考えたこともないです。えーっと、物を売ること、ですか?
部長:
間違いではないが、それだけでもないんだ。マーケティングとは、お客様に「価値」を届けることなんだ
神山:
価値、ですか……。商品ではなく?
部長:
そう。お客様、つまり消費者は商品に付随している「価値」を求めているんだ。私たちは価値を商品として形にし、それを販売することで対価を得ているというわけだね
神山:
よくわかりません
部長:
では消費者の目線に立ってみよう。もし神山さんがお客様なら、なぜ、だいふくにゃんこを買うのかな?
神山:
そうですね……かわいいから、でしょうか
部長 :
そうだね。かわいいものを所有したい。かわいいもので部屋を飾りたい。ゆるキャラを集めたい。人によって理由は違うかもしれないが、消費者が欲しがっているのはぬいぐるみそのものじゃない。ぬいぐるみに付随する、なんらかの「価値」なんだよ
神山:
なるほど! そういわれてみれば、ぬいぐるみならなんでもいいというわけではありませんね
部長:
いいところに気が付いたね。だいふくにゃんこのぬいぐるみを買い求めるお客様には、だいふくにゃんこでないといけない理由があるんだ。だいふくにゃんこに価値を見出す消費者こそが、私たちのお客様になりうるということだね
神山:
あせって売ろうとしても、だいふくにゃんこに興味がない人にとっては「価値」がないから、買ってもらえないということですね
部長:
そのとおり。私たちは価値を受け取ってもらうために、消費者のニーズを正しく把握しなくてはいけない。神山さんが言った、「かわいい」という価値を持つ競合他社の商品は世の中にたくさんある。たとえば、ピュアランド社の「ミケタマちゃん」グッズとか……
神山:
うう、悔しいですけど、かわいいですもんね。わたしも持っています
部長:
ウチの娘も夢中だよ。だが私たちは、ミケタマちゃんだけではなく、だいふくにゃんこも消費者に選んでもらわなくてはいけない
神山:
ミケタマちゃんがあるから、だいふくにゃんこはいらないと思われてしまったら、売れませんね
部長:
そういうことだ。神山さんが考えるべきなのは「選ばれるための戦略」だよ
神山:
なんだか、頭が痛くなってきました
部長:
問題は、なるべく小さく切り分けて考えるようにしたほうがいい。大事なのは「消費者のニーズの把握」と「選ばれるための戦略」だよ
神山:
わたしに、できるでしょうか?
部長:
神山さんが、やらなくちゃいけないんだ。大丈夫、私がついているよ。ひとつずつ問題を洗い出していこう
神山:
は、はいっ!(正直、まだよくわからないけど)よろしくお願いします!
まとめ
こうして、神山さんは渡辺部長とともにマーケティング道への一歩を踏み出しました。
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