eメールのシナリオ作りと運用の“キモ”を公開!

2017年6月6日・16日に開催しました弊社主催の『失敗しないダイレクトマーケティング』セミナー。今回は、「eメールのシナリオ作りと運用の“キモ”を公開!」と題し、株式会社インターコネクト石川人史氏がメール運用の施策、その実践方法をご紹介しました。
詳細なノウハウを知りたい方
販促施策でお悩みの方
セミナーレポート
マーケティングオートメーション市場が活況を呈し、導入が活発化している昨今ですが、「導入してみたけれど、肝心のeメールの効果がイマイチ…」、「シナリオ設計をどうすればいいかわからない…」といったお悩みを頻繁に耳にします。この講演では、eメールで顧客と良好な関係を作る上で欠かせないポイントや、効果を上げる、持続させるために考えておきたい施策運用のポイントについて事例を交えてお話しできればと思います。
「企業と顧客の接点」としてのメールコミュニケーションは依然として有効
はじめに、メールを取り巻く環境を確認してみます。コミュニケーションのツールとして、LINEやTwitter等SNSの勢力が年々拡大しています。特に若年層はインターネットを利用する時間の多くをSNSの利用で費やしており、ビジネスシーンを除いてはメールのパワーダウンは否めません。一方、特に30代以上の層では企業からの情報を受け取り、その情報を吟味するメディアとしてメールを活用している生活者が多く見受けられます。SNSの台頭はあるものの、依然としてメールによるコミュニケーションは今日現在では有効であると言えます。
メールコミュニケーションがいまだ有効であるとはいえ、ビジネスシーンでは1日に50本強のメールを、プライベートでも10数本のメールマガジンを受け取っているというデータがあります。私たちは日々相当量の情報を受け取っており、限りある時間の中で情報を消費するために「処理スキル」は相当に向上しています。企業から送るメールは興味・関心を持ってもらえなければ開封すら難しいでしょう。
Targeting×Relevancyでお客様のココロとカラダを動かす
興味・関心を引き、読まれるメールを配信するために、様々なセオリーや成功手法が先達により確立されています。運用の現場ではこうした知見は積極的に活用すべきですが、手法だけでなく基本原則をおさえておく必要があると思います。メールは「お客様と直接、個人的な接触をして反応を得る」メディアで、こうしたコミュニケーションはダイレクトマーケティングが得意とする領域です。ダイレクトマーケティングのコミュニケーションの基本原則は「Targeting × Relevancy」です。
Targeting(ターゲティング)は、コミュニケーションをしたい相手をできる限り絞り込むこと。生活者は一人一人で不安や悩み、欲求は異なります。メッセージを届けたい相手が誰なのかを明確にしないと、お客様とパーソナルなコミュニケーションをすることは叶いません。
Relevancy(レレバンシー)は、関連性・適合性・ピッタリ感といった意味です。絞り込んだターゲットがどんな人で、どんな気持ちなのかを知ったうえで、適切なメッセージを、適切なタイミングで発信することができれば、「この商品・サービスは自分にピッタリだ!」ということになり、お客様のココロとカラダを動かすことができます。
ここからは、上記の基本原則を踏まえつつ、日々のメールコミュニケーションの運用に取り入れやすい3つの施策について事例を交えてご紹介していきます。
1.初回接触時の重要性~注目が高いうちに次のフェーズへ引き上げる~
最初の事例として、メールによるお客様とのファーストコンタクトに注目してみます。
事例: BtoCメーカーの会員向けメールマガジンの開封・クリック率比較
あるBtoCメーカー様は会員向け(お客様の意思により登録)に隔週でメールマガジンを発行しており、平均的な開封率は16~19%程度、クリック率は3~7%程度となっていました。ある時、「会員登録直後(約2ヶ月以内)」と「それ以外」で開封率、クリック率を調べたところ、以下のような結果となりました。
会員登録直後は開封率50%、クリック率20%と、既存会員と比較すると大変高い数字となっています。この数字は登録から時間が経つにつれ、徐々に低下していき、平均的な数値に落ち着きます。BtoBのメールマガジンでも同様の傾向が出ておりますので、顧客化直後のメールコミュニケーションは重要になってきます。
「自分の買い物に満足している」といった好意的なものから、「自分の買い物は合っていただろうか」という不安まで、様々な理由から購入直後やサービス登録直後はお客様の注目・関心が大変高い時期です。注目・興味関心は時間の経過とともに低下していきますので、それより先にリピート化や好意醸成に繋げていくことが、お客様の維持・育成(リテンション)フェーズの活動になります。
顧客化直後に実施されるメールコミュニケーションは概ね以下のような内容となります。下記の考え方はメール施策だけに限らず、DMやアウトバウンド等の施策にも有効です。
実施するメールコミュニケーション
- 次に何をすればいいのか、迷わせることなく行動に導く。
- 商品・サービスが自分のニーズに合致していると感じてもらう。
- 商品・サービスの特徴や自分にとってのベネフィットを理解・納得してもらう。
- いい選択をした…と満足してもらう。
- 商品やサービス、ブランドへの懐疑をなくしてもらう(好きになってもらえればなお良い)。
メール施策を実行しているほぼ全ての企業様は、顧客化直後に何らかのメールを配信していると思いますが(例えば購入確認メールや登録サンクスメール等)、単発で終わってしまうケースが多く見られます。先にも記載した通り、顧客化から次のフェーズに引き上げることがこのタイミングでのキモとなりますので、継続的なコミュニケーションが必要となります。通販業界では、次のフェーズへの引き上げを目的としてメールコミュニケーションをプログラム化しており、多くの企業様の参考になると思いますので、以下の事例をご紹介させていただきます。
事例: 単品通販事業者の初回購入者向けメールプログラム
下図はある単品通販事業者が実施していた初回購入者向けのメールプログラムです。サプリメントのモニターセット(10日分)に申し込んだ新規顧客に対して、継続購入(定期購入)へ誘導することをゴールとしています。お客様のステータスに変化が起こった時がメール配信のタイミングに設定され、そのタイミングにふさわしいメッセージが配信されます。メールの内容は「迷わせることなく行動に導く」という観点から極力シンプルになっており、専用のランディングページへ導くことを目的にしています。商品特徴やベネフィットの再理解はランディングページで図るという構造です。
2.行動データによるセグメンテーション
メルマガ等を送る際に全リスト一律で配信されている企業様は多いと思います。読み物や新商品のご案内などは一律で良いかもしれませんが、成果を得たい施策のメールも一律で良いのでしょうか?ある企業様のテストでは、毎回メルマガを開封しているお客様とほぼ未開封のお客様にキャンペーン訴求のメールを一律で出したところ、開封率で15倍もの差がつきました。こうした事例からもわかる通り、個々のお客様に最適な訴求をする(=セグメンテーションにより訴求の出し分け)ことでメールコミュニケーションの効果は格段に上がります。
とはいえ、お客様のセグメンテーションを実行するにはデモグラフィック(性別、年齢、居住地等の人口統計学的属性)、サイコグラフィック(悩み、要望、好意等の心理学的属性)、トランザクション(POSデータ等)、その他行動データ(アクセスログ等)などの様々な因子を検証しなければなりません。
上記の中から有用なデータを導き出したとしても、すべての顧客についてデータが揃っているとは限りません。さらに、因子の組み合わせは無数に存在するため、既に成功しているセグメントパターンを持っていない限り、いきなり効果的なセグメンテーションメールのプログラムを組み立てるのは難しいと思われます。
メールの効果を上げることがミッションである運用の現場にとっては頭の痛い話ですが、この課題の解決策として、行動データによるセグメンテーションという手法をご紹介します。これまでにお話しした内容と多少矛盾するところはあるのですが、まずは施策を実施してみて、その施策における行動データを分析し、セグメンテーションに活用するという手法です。
事例: BtoB HOTリード発見・育成のメールコミュニケーション
BtoBビジネスを展開しているある企業では、最近新しいサービスをローンチしました。既存のメルマガ会員や取引先、展示会・セミナーで収集したリストに対してメールコミュニケーションを展開し、HOTリードを発見、育成するというデジタルマーケティングのプロジェクトが立ち上がりました。
プロジェクトの当初設計では、企業規模、業種分類、取引規模などの企業属性データとメールを受け取った個人の行動データでスコアリングし、スコアに応じてメールを出し分けるというコミュニケーションフローを検討していました。複数パターンのペルソナを設計しスコアリングに反映しようとしたところ、データベースの情報に不足が多く、データの収集・整備が必要であることがわかりました。そこで、属性データでのスコアリングは後の検討に回し、全リスト一律の配信で得られる行動データの分析から運用を開始するということでスタートしました。
メール施策の結果略図が以下の通りです。
メールへの反応およびその後の行動から、HOTリードと定義できるセグメントが右上段になります。このセグメントに属するリストを分析することで、どの企業属性のリードに対してコミュニケーション活動を行えば効率的かを知ることができました。右下段および中上段はWARMリードということになりますが、行動データを深掘りしたところ、WARMリードの中に特定の内容のメールを転送している人がいることがわかりました。この行動の意味を「自分の業務に直接関係はないが、メールの内容は社内での共通課題であり、担当部門に転送した」と仮定し、彼らもHOTリードと定義しました。
プロジェクトと当初段階のペルソナ設計ではこうした「インフルエンサー」は想定されていなかったため、行動データを読み込むことで得られた気づきと言えます。こうしてHOT、WARM、COOLと大きく3つにセグメンテーションし、各セグメントごとに適切なメールコミュニケーションを行っているというのが施策の現状です。
行動データによるセグメンテーションのメリット・デメリットを以下にまとめておきます。
メリット
- 複雑な戦略策定を省力化・時短できる
- 次の施策の優先順位が立てやすい
- 行動データを読み込むことでの発見がある
デメリット
- 行動データを得るまではコミュニケーションの齟齬に注意が必要
- 次施策当初は成果が出にくい(投資期間あり)
- 行動データを把握する仕組みが必要
既にメール施策を行っていて効果に疑問を感じている企業様であれば、今保有するデータの分析からすぐに着手できますし、これから施策を始めようとお考えの企業様であれば、クリエイティブなどのテストを並行しながら、行動データを蓄積、早期に効果を高めることができる手法であると思います。
3.テストで成功パターンを確立
ダイレクトマーケティングのコミュニケーションは「テスト」の実施と効果検証を経ながら、戦略・戦術のブラッシュアップを行い、発展を図るという考え方が前提ですが、これはメールコミュニケーションも同じです。メールにおけるテスト項目は様々ありますが、主だったものを挙げますと、「チャネル」、「メッセージ」、「タイミング」となります。
冒頭にも記載しましたが、上記の各項目に対して先達が確立した成果の出ているセオリーがあります。こうした知見を活用しながら、テストによって検証を行い、自社のお客様とのコミュニケーションに最適なパターンを見つけていくことが効果UPの近道だと思います。
A/Bテストについて
メールのテストは「A/Bテスト」を用いて行います。A/Bテストとは、 2パターンの施策を基本的に同一条件で競わせ、どちらがより効果の高い結果を得られるかを検証する手法です。A/Bテストを繰り返すことで施策の精度はどんどんと上がっていき、最終的に勝ち残ったものがチャンピオン施策となりますが、この繰り返しの過程で変更が加えられていきますので、もう一度初めのパターンに戻って検証ということもあります。
テスト実施にあたっての注意点
①変更点は必ず1つに絞ること
変更点が複数あると、何が影響して優劣がついたかわからなくなってしまいます。
②根拠のある仮説を立て、テストを行うこと
仮説のない漠然とした比較では検証結果に得るものがありません。A/Bテストは仮説を実証する実験であると心得てください。
メールコミュニケーションのA/Bテストは、お客様の行動導線に沿って実施します。開封→クリック→成約・CVの順です。こうすることによって、効果を高めながら施策のブラッシュアップを行っていくことが可能となります。
まず実施すべきは開封率に大きな影響を与える件名のテストです。過去弊社で実施したテストではタイトルに個人名を挿入することで開封率が4%向上するという事例もありました。件名だけでなく、差出人名も開封率に影響を与えますのでテストを行ってみるべきです。ぜひ皆さまのお客様にピッタリ合った施策をA/Bテストで発見してください。
まとめ
本日は、私たちがこれまで手掛けてきた事例をご紹介しながら、皆さまのいつもの仕事の現場ですぐに始められることを念頭に、メール運用の以下3施策をお話しさせていただきました。
- 1.初回接触時の重要性
- 2.行動データによるセグメンテーション
- 3.テストで成功パターンを確立
ご静聴ありがとうございました。
【講師プロフィール】
講演者:株式会社インターコネクト |
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